『ハワイアンブルーと群青劇(なとなと)

たくひあい

01.夏休み

prologue



7月某日。

過去最高気温だという今年はとにかく暑く、九類浜町の気温は30度を超えている。そんな暑い中、佳ノ宮まつり(かのみやまつり)はその日、他人に会うべく外に出ていた。

「あつ……吸血鬼だったら、灰になってるよ」


ふらふらする。

 開始5分でも既に暑くて、帰りたくなっているが。

それでも不満を言うだけで足は進めているので偉いかもしれない。


――――もっとも、まつりの場合。

亜麻色の髪や白い肌を隠すように日傘をさしており、薄手のカーディガンを羽織っているのでなおの事暑いわけだが……


だったら脱げ、とは言ってはいけない。

これは本人なりの拘りだ。理由は秘密。


例えば「AB型の人って何考えてるかマジわかんなくて嫌い! 決まった行動をして!」

ある友人がそう言って、意味不明な血液型診断で、意味不明な気分屋を攻撃し始めたとき、その内側に居るのが大体まつりの性質である。

気分や日々に意味が決まっているなんて窮屈じゃないのか。


そんな事はどうでもいい。

まつりは、角を曲がって、目の前に広がる海を見た。


「わぁ……」


 最近訳あって越してきたこの辺りは劇場版ドロライブ!〜涙の青いラーメン〜の隠れ聖地と言われる、『盗撮ロード』がある。

今そこそこ人気の観光地だ。


海が綺麗な道で、よく避暑地やバカンスに使われるとかなんとかって聞いた覚えはあるし、今も塀や防波ブロック越しに、海水浴客がはしゃいでいるのが見える。


まるで映画のワンシーンみたいだ。綺麗で。輝いていて――――


「暑いのになぁ」

変なの、とまつりは首を傾げた。

 病弱で、これまでほとんど海で遊ぶ経験のなかったまつりには、わざわざ海水に浸かるなんて今ひとつわからない文化である。

いくら暑いとはいえ、塩水に浸かりに行きたいとは思わないし、海洋生物は恐ろしい。

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