週末神様降臨~好きな様に世界を作っていた我が何故下界に降臨せねばならぬ!?~

オノヒロ

我が降臨するまで

我は造物主である!

「あぁ、クレア……! 君は何て美しいんだ!」

「スティーブ! あなたもとてもハンサムで素敵よ!」

「クレア、僕は君の為なら何だってする! 約束する!」

「まぁ、スティーブ! 嬉しいわ! 私が襲われても助けてくれる?」

「勿論だよ! 君の為ならば当然さ! 僕は世界が滅んでも君を愛し続ける事を誓うよ!」

「スティーブ!」

「クレア!」

 幸せそうに抱き合う二人の男女。


 バカップルがそう言うので、世界を滅ぼしてみた。


ボカーン!ドドドドッ!


 噴き上がるマグマ。空からは隕石が降り注ぐ。その様な世界破滅の惨状の中で先程のバカップルはというと……


「ちょっと! 早くどきなさいよ! 邪魔で逃げられないでしょ!?」

「ふざけんなよ! 俺が先に逃げるんだよ!」


 愚かな……我が世界を滅ぼす事を決めた以上、逃げ場など無いというのに……我の被造物でありながらその程度も分からぬ愚か者とは……此度の失敗であるな……


カチカチッ、ボンッ、


『データを消去しますか? YES/NO』


カチカチッ、


『完了。データを消去しました』


……


「ハァ~……此度の実験も失敗であるか……あれ程の時間と手間を掛けたのに呆気の無い物であるな……」


 消えてしまった世界を思い出すと何とも物悲しい気持ちになる物である……


「呆気無い物にしたのは貴方です!」


スパーン!


「ぬお~!? 我の聡明な頭に割れんばかりの衝撃がぁ~!? 誰であるか!? 我の頭にハリセンの一撃を喰らわせたのは!?」


「主、反省をしてください。これで120回目のデリートです」


 何と冷たい声であるか。まるで造物主に言い放つ言葉とは思えぬのである。ミカエルめ、我の御使いでありながら本当に酷い奴である。せっかくアマテラスの世界の人間が作った漫画に登場するキャラクターを参考に作ったというのに……その褐色の肌と金色の髪を持つ我好みの美貌をもっと活用せぬか!


「ぐぬぬっ……ミカエルよ。造物主である我に対して最近は不遜が過ぎるのではないか? 我もさすがに傷つくぞ?」


 作ってやった時は従順でおったのに知恵を付けてからというもの我への扱いがどんどんと雑になっていくのである……このままではその内、我は殺されるのではないとすら危惧する毎日である。


「主、あなたに作られてから私はあなたが成功した所を見た事がありません。それでは主を崇めようにも無理があります。文句があるならば一刻も早く成果を上げてください。このごく潰し」


 さりげなく罵倒まで入れてくる様になったであるか……我が創造物ながら見事な進歩である。造物主として鼻が高いのだが、何故であろうか? 心の奥からシクシクと鳴く声が聞こえるのは……


「何を言うミカエルよ。まだ高々120回目の失敗である。天地を想像して新たな世界の造り手を創り上げるには少なすぎる試行回数だとは思わないであるか?」

「それは一理ある事を認めましょう。ではお聞きします。今回のデリートは如何なる判断からされたのでしょうか?」


 口調こそ丁寧だがミカエルの声には温かみが全く感じられないのである。これは下手な事を言えば先程以上の怒りを受ける事は必定であるな……


 だが、我に大義名分あり!


「うむ! バカップルが世界が滅んでも恋人を守るとのたまいってな! 試しに滅ぼしてみたらどうなるか見てみたのだ!」


ザグッ!


「ぬお~!? 我の高貴たる胸部に剣が~!?」


「主、お願いですから死んでください。もしくは私を消去して主の世話から解放してください。」

「ミカエルよ。そこまで怒る事は無いであろう? それに我の胸を剣で刺すでないである。死ぬはしないが痛い事は痛いのであるぞ?」


 我は胸に刺さった剣を抜きながらミカエルを注意するのだったが、ミカエルは我の注意も聞かずに天を仰ぎおる。


「あぁ……何故、私はこの様な無能な主に創造されたのでしょうか……? アマテラス様やヤハウェ様の下ならばこの様な苦労はしなかったはずなのに……神よ、あなたはどこまで非道なのですか……」


「お~い……ミカエル~、神は我であるぞ~? 我らを見ている更なる上位存在の可能性は否定はせんであるがな~。それに、同僚の名前をあげるなである。露骨に比べられている気がして我も落ち込むであるぞ?」

「……」

「何であるか……? その愉悦に満ちた悪意ある目は? 何やら嫌な予感がするのであるが……?」

「いえ、お気になさらず……そういえば主、課長が主をお呼びしていた事を忘れておりました。用件は120回連続の失敗についてだと思われます。大変お怒りのご様子でしたので、お早く向かう事をお勧めいたしますが?」

「何っ!? 課長がであるか!? それは急がねばマズい事になるやもしれぬであるな……というかミカエル! お前、ワザと黙っておったであろう?」

「いえ、まさか……私が主にその様な不敬を致すはずがありません。全ては偶然の事です。少しでも遅れて課長から怒られればいいなんて思っていません。それよりも、早く行った方がよろしいのでは?」


「クッ……! 言いたい事はまだまだあるが……それもそうであるな。とはいえ、この件について後で問い質すであるぞ? 覚悟しておくのである」

「はい。分かりました。どうぞお好きに」


 何とも余裕のある顔が子憎たらしい御使いである……自らの被造物の掌で転がされている様な気がするのは業腹であるが、今は課長の下に急がねば……

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