第11話 かわいいお迎え
ヨキを送ろうと外に出ると、かわいらしい迎えが来ていた。
「あっ、やっぱりじいちゃんいた」
「わざわざ来たのか、アリサ」
ヨキの孫娘であるアリサだ。顔のつくりのどの部分をとっても小さく引き締まっており、唯一大きい目は濃い睫毛に縁どられている。黒髪を後ろで玉に結っている。可憐という言葉がぴったりで、祖父母にとって孫はたいそうかわいいものと相場は決まっているが、ヨキのような気難しい人物がことさらにかわいがっているのも納得の風貌である。
「いっしょにリンドバーグさんとこ行こうって言ってたでしょ。なんでひとりで行っちゃうの」
「年寄り扱いするな。ひとりでいいと言ってあっただろう」
「年寄り扱いはしてるけど、それ以上に病人や怪我人扱いしているの。昨日まで腰が痛いって歩けなかったくせに」
一見お嬢様然とした外見とは裏腹に、気っ風のいい少女である。
ヨキがバツの悪そうな顔をするのでリンドバーグは笑いを漏らしてしまう。ヨキもアリサの前では形無しだ。そんなリンドバーグを見てヨキはきっとにらんだ。
「じゃあリンドバーグさん、お世話になりました」ぺこりとアリサは頭を下げる。
「アリサ」とリンドバーグは声をかけた。
「なに、リンドバーグさん」
「アカリのやつをあんまり恨まないでやってくれ」
アリサは眉根を寄せると、言った。「おじいちゃん。リンドバーグさんに余計なこと言ったでしょう」
頭のいい子だ。
ヨキは苦虫を嚙み潰したような顔でリンドバーグをにらむ。余計なことを言うなと言わんばかりだ。
「アリサ。そうじゃなくてだな」リンドバーグは取り繕うように言った。「そうじゃなくて、俺にはアリサがあいつのことを避けてるように見えたんだ。余計なお世話だったらすまん」
アリサは唇を尖らせる。「……避けてるのは、みんなだって同じじゃない」
「俺はちがうけどな」とリンドバーグは厳然とした口調で言った。
大人げないことは理解している。それでも言った。アリサが良い子であることはわかっている。だからこそリンドバーグは、アリサが村の同調圧力に支配されずにアカリにとって救いになってくれるのではないかと期待していた。両親を失ったアリサにとってはつらいことかもしれないが、その彼女がアカリを認めることがあれば、少年が孤立しているいまの状況を打開できるかもしれない。
アリサは顔をうつむけて、か細い声で言った。
「……ごめんなさい」
リンドバーグがヨキの様子をうかがうと、目が合った。少し顎を引いて頭を下げる。そして、アリサに向かって言った。
「……アリサ、悪かった」
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