第2話 邪神の島
リサ「…まさか指名手配されてる有名人のお二人とお会いすることになるとは」
レイ「ここクソ狭いな……」
リナ「乗れてるだけ奇跡なんだ。少しぐらい仕方ないだろう?」
???「嫌なら降りても構いませんよ?」
レイ「別に、嫌ではない。慣れっこだから」
リサ「コスズお客さんは丁重に扱わないといけませんよ?」
コスズ「リサさん。お言葉ですが、このような犯罪者を匿えば私たちも共犯になるんですよ?」
リサ「大いに結構ですよ。なんせ私も太陽の王家が実権を握る今を面白く思っていませんから。」
コスズ「リサさん?」
リサ「勿論冗談ですよ」
リナ「お前…磔にされるかもな」
リサ「ふふ、私が磔?面白いことを言いますね。………助けてください」
コスズ「プライドはないんですか!?プライドは!!」
リサ「いいですか?コスズ。商人としてのプライドは確かに大切ですが自身が崇高な存在だとかいう誤った自己評価を下すプライドは持ってるだけ無駄なんですよ」
レイ「商人のプライド?」
リサ「簡単ですよ。ただ顧客を満足させるそれだけ」
コスズ「もう一度買いに来たい売りに行きたいそう思ってくれる商売をするそれがうちのモットーです。」
リナ「崇高な理念を持ってるんだな」
リサ「そのおかげでうちはこの狭いオンボロ馬車一台の限界商人ですけどね。」
コスズ「リサさんはこういった過疎地域でのみ商売をやっていますから」
レイ「何故?」
リサ「知る人ぞ知る隠れた名商人カッコいいじゃないですか」
リナ「まさか……それだけ?」
リサ「勿論」
レイ「その当たり前でしょう?みたいな顔やめてちょうだい。」
リナ「ふむ…そういうのが普通なのか」
レイ「何一つ普通じゃありません異常です。異常」
コスズ「この馬車と商品代を引いても尚黒字になる程度はしっかり商売してますので…普通といえば普通なのでは?」
レイ「絶対普通ではない。」
リサ「顧客に満足してもらえれば私としては十分さ。」
リナ「犯罪者でもか?」
リサ「わたしは顧客であれば皆平等ですよ。」
コスズ「最低限自衛はできますし。」
レイ「そんなふうには見えない……」
リサ「できるように見える時点で負けなのですよ。」
コスズ「こんなオンボロ馬車って時点で誰も寄りつきませんし、何も持っていないように見えれば不用意に近付いてきやすいので対処が簡単なんですよ。」
レイ「なるほど…」
リナ「ふむ…その理論だと魔導書を使う魔術師はそういう輩に襲われやすく対処しやすいのか」
レイ「リナ様の場合オーラがありますから多分アレ使わないと隠せないと思いますよ」
コスズ「確かにそのオーラを隠すのは難しそうですね。」
リサ「オーラ消しの
リナ「いや……それなら持ってる。今は起動してないが」
レイ「魔力を抜かれる感覚が嫌いなんでしたっけ?」
リナ「ぁあ、いつまでも慣れなくてな。」
リサ「古代魔術具を使うとそのような感じなんですね。勉強になりますね。」
コスズ「私のメガネも古代魔術具ですが、そういう感覚にはなりませんね。」
リナ「きっと充電式なのだろう。系統が違う」
リサ「…見えてきましたよ。厳密にいえば見えていませんが、この海の先に邪神封印の島がありますよ。」
リナ「海を渡る術を君たちは持ってるのか?」
リサ「本来なら持ち合わせていませんが、ここには優秀な魔術師がいますから、渡れますよ。」
レイ「リナ様の魔法で海を凍らせるのか?」
コスズ「数少ない魔術師の中で海を凍らせることができる人なんてリナ様しか居ないんですから、そんなバレるようなことはしません。」
リサ「特別な
コスズ「特別と言ってもただ氷結魔術が使えるってだけですけどね。」
レイ「それで海を凍らせるのか?じゃぁ、優秀な魔術師がいるからできるってどういう?」
リサ「簡単な話ですよ。この古代魔術具は一度に入る魔力は限りなく少ないのです。」
リナ「だから私の魔力を定期的に補充することで渡海を可能にするのか。」
レイ「それだと帰れなくなりません?」
コスズ&リサ「帰れなくなるも何もここでお別れですよ。」
リナ「その古代魔術具を売ってくれるのか?」
リサ「いえ…代金は貰いませんが、少しお手伝いをしてもらおうかと。」
レイ「お手伝い?」
リサ「この古代魔術具を邪神の島に設置するそれだけです。」
リナ「何故?」
コスズ「そっちに商売しに行くためですよ。」
レイ「ぁあ、なるほど理解したわ」
リサ「あなた方は様々な物品を買える。私共としてはいざという時の保険やかの王家の人間と商売しているというレッテルを手に入れられる良い話ではありませんか。」
レイ「王家との取引がまさか反逆者で現在どこにいるかわからないリナ様と考える人などいませんからね。」
コスズ「ということで、お願いしますね。」
リサ「では…またのご利用を」
リサ&コスズ「お待ちしています。」
リナ「ありがとうな。」
レイ「ええ、また利用させて貰うわ。」
リサ達と別れてから数分、海の上を渡っていた。
レイ「不思議な方々でしたね。」
リナ「ぁあ、面白かったな。」
レイ「面白かった……というより、底知れなさの方が私的には印象に残りましたね。」
リナ「さっきは不思議な方々って言ってたのにか?」
レイ「不思議で底知れなさがあるんですよ。こう、笑顔の裏に張り付いたヤバさというかそれこそ危ない一面を感じるんですよ」
リナ「コスズという方は大型犬みたいなイメージだったな。
リサはアレだ。アライグマ」
レイ「結構危険な生物らしいですね。アライグマ」
リナ「ぁあ、よく庭師の爺やが話していたな」
レイ「私が近衛兵になる前に居たという人ですよね?」
リナ「ぁあ、年齢には抗えなかったらしい。あの人は太陽時代より前から老人だったらしくな。」
レイ「太陽の法律の元では老化は極限まで遅いですからね。」
リナ「だからこそ彼は今なお苦しみながら生きているんだろうな。」
レイ「それを終わらせるためにも私たちは戦い続けてるのです。」
リナ「ぁあ、そうだな。そうだったな。」
リナ様が少し心配だ。やはり長い間休まれていないのが体に来ているようだ。早く島に着くといいんだが。
レイ「……リナ様これからの計画を立てないといけませんね。」
リナ「まずはかろうじて生きているであろう各部隊長と合流しなくてはな。」
レイ「"参謀長"も居ないと静かで寂し……くはないか。静かですね。」
リナ「彼女の事だそこら辺の一般人から金を奪いながらしぶとく生きていると思うよ。」
レイ「案外彼女の事ですし、私たちの思考を読んで先にあの島にいるかも知れませんね。」
リナ「流石に彼女といえど、それはないと思うぞ。」
レイ「島に着けばわかることではありますが、彼女の事ですし、居そうではありますよね。」
リナ「そうだな。居たとして喧嘩するなよ。」
レイ「リナ様の命令といえど少し難しいですね。」
リナ「だろうな。反乱軍では日常茶飯事だった。」
レイ「…島が見えてきましたね。」
リナ「逃げたな。まぁ、いい。魔力感知は特に反応は無しか、」
レイ「まだ少し先ですし、完全に範囲に入るまではわかりませんよ。」
リナ「いや、感知した彼女のようだ。」
レイ「ここまで綺麗なフラグが立ちましたし、正直あまり驚きませんよ。」
リナ「会いに行くか、レイと犬猿の仲である彼女に」
???「あらあらこれはこれはレイじゃ、ありませんか。私が居なくて不安だったでしょう?」
レイ「相変わらずの減らず口だな。レイン」
リナ「やはり来ていたか」
レイン「勿論ですよ。逃げるならここしかありません。」
レイ「逃げ足とその逃げる時の頭の回転の速さだけは評価するよ。」
レイン「貴方の場合は相手の方ばっか見すぎて躓いて死んでしまいそうですけどね。」
レイ「忠告として受け取っとく」
レイン「お好きにとらえてどうぞ。それよりもリナ様。住むに最適な場所を見つけました。」
リナ「流石の手際だな。」
レイン「このぐらいできなくては
反乱軍総参謀本部参謀長官は務まりませんよ。」
レイ「いつ聴いても長い肩書きだな。」
レイン「月の王家長女護衛近衛兵
兼反乱軍最高本部隊親衛隊大隊長
兼反乱軍最高指揮官代理レイの長さには勝てないさ。」
リナ「月の王家護衛近衛兵以外は消えるかもな。このままくたばれば。」
レイ「反乱軍を再建するにあたってそこら辺の階級も見直した方がいいかも知れませんね。」
レイン「リナ様着きましたよ。ここが、新拠点になる場所です。」
リナ「ふむ…地下か」
レイ「邪神封印の島で地下空間……?」
レイン「君の疑問は最もだな。だが安心したまえ、君程度が思いつこと私も思いつく。ちゃんと調査した。
結果的にいえば黒だった。」
リナ「だった、ということは何か手を打ったのだろう?」
レイン「勿論。封印石がある地点を中心に半径15mを徹底的に封鎖し空気すら通しません。」
リナ「念には念を入れておくか、封印結界を後で張っておく。」
レイン「助かりますリナ様」
レイン「リナお前には仕事がある。大切な、大切な仕事だぞ。」
レイ「勿体ぶらず早く言え」
レイン「地下空間の拡充と整備大切だろう?」
リナ「私も手伝おう。崩壊なんて起きたら洒落にならない。」
レイン「一応探知を入れて全体図は確認したので設計図も作りました。」
リナ「流石だ。」
レイ「…これなら前の反乱軍で別々の場所にいた全員を合わせた人数でも入るな。」
リナ「だが、いつかはここは本部になりまた支部が出来るだろう。じゃなきゃリスクが高すぎる。」
レイ「ここを完全な要塞にしてもいいですね。」
レイン「費用対効果って言葉を知らないのか?」
リナ「無しではないが、海という天然の要塞がある限り必須というわけでもないだろう。」
レイ「そうですか」
リナ「だがまずは、この地下空間の改築からだ。」
the new reich ヴィル @FIEteru
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