実は切れ者の平凡王子は凄腕魔法使い!最強の聖騎士である婚約者と世の中の理不尽を正す〜

徒然書

第1話 16歳の誕生日

シーゲル大陸南西に位置する、ブリッツェン王国。大陸歴1200年の現在、民からも平凡と噂をされる王族がいた。


現国王の長子にして、王太子候補筆頭であるアインシュトラール・フォン・ブリッツェン第一王子。


容姿はそれなりには整っているものの平均の域を出ない。剣の腕は城内の一兵卒にも敵わない。魔法の腕も人並。人柄は温厚で周りの話をよく聞き入れるため、平凡でも補佐するものがしっかりしていれば治世は上手く行くのではないかと思われている。


幾多の騒動に巻き込まれていく内に、平凡王子という呼び名とは程遠い本性を露わにしていく事となるー。



『殿下!またこちらにいらしたのですか?』

「やあ、メア。ようやく綺麗な花が咲いたんでね」

『確かに綺麗ですね…ではなく、また護衛も付けずに…』

「城内だからいいじゃないか?それに今、最も信頼出来る護衛が目の前にいるじゃないか」

『はぁ…であればせめて殿下の居場所がすぐ分かるようにしてください』


目の前で溜息をつく女性は僕の婚約者であり、聖騎士最強と噂されるメアウス・リヒト・シルト。現王国宰相のシルト侯爵家の一人娘で、僕とは小さい頃から面識もありお互いをよく知る仲だ。


「それよりメア?二人きりの時は殿下なんて他人行儀な呼び方じゃなくて、いつも通りアインって呼んで欲しいな」

『もう…アインは本当に変わらないわね。もうすぐ式典の準備が終わるから、そろそろアインも支度を済ませないと』

「おっと、もうそんな時間か」


今日は僕の16歳の誕生日。この国では16歳を迎えると1人前とみなされる。現国王の長男である僕は、このまま行くと王太子の座に就く事になるだろう。気乗りしない部分はあるが、民を守るためには致し方ない。


式典の主役である僕は専属のメイドたちから思う存分メイクアップさせられた。そして僕の婚約者兼護衛として隣に立つメアも支度は整ったようだ。アップになった髪が普段よりも女性らしく、青色のドレスが非常に映える。


「今日のメアはまた一段と綺麗だね」

『アイン殿下もよくお似合いですよ。さぁ、そろそろ参りましょう』


メアや他の側近と共に、式典が行われる王宮の広間へと向かう。既に多くの貴族達が参列しており、僕の姿を見つけると恭しく礼をする。まぁ内心どう思っているかまでは分からないが…何せ僕は平凡王子なのだから。


メアと共に貴賓席に着く。式典が始まるまであと少し…そう思っていたところ、突然会場内で騒ぎが起こった。


1組の男女が1人の女性を糾弾しているようだ。しかし驚く事に、糾弾しているのは僕の弟であるツヴァイシュヴェールト・フォン・ブリッツェン第二王子その人。そしてその隣にいるのはトラオム教会の聖女、デザイアだった。


そして糾弾されている女性をよく見ると…ギューティヒ公爵家のフェリーチェ嬢。我が弟の婚約者だった。

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