第2話

「入学おめでとうございます。」


ホールに響き渡る理事長の声を上の空で聞いていた。私の周りには髪を染めた頭が並んでいる。


私は黒髪を腰辺りまで伸ばし、真新しい高校の制服に身を包んでいる。


私は制服を着崩す事なく、きっちりと着ている。見た目は真面目な女子高校生に見える。


「おい、あの先生、美人じゃねぇ?」


「あの先生、凄く格好良い。」


私は男子生徒や女子生徒のヒソヒソ声に視線を教員席に向ければ、確かに見た目の良い教師が揃っている。


「ふふっ、見た目が重視なの?ここの先生は………。」


私の一人言が小さく呟かれた。理事長の長い話が終われば、入学式は淡々と進んでいった。


私は今日から西高校の生徒になった。勿論、兄達はこの西高校の3年生にいる。


周りを見渡せば、真新しい制服を着た一年生がガヤガヤと席を立ち、ホールを出ていく所だった。


入学式は無事に終わり、教室に向かって歩いていく。西高校は偏差値も高く、勉強さえすれば割りと自由な校風である。


「ウエストの幹部、きっと3-Sだろ。」


「格好いいよな?顔も容姿も完璧なんて羨ましい限りだよな?」


「その上、頭も喧嘩も強いなんてな。」


「幹部で弱かったらヤられるよな?」


前を歩く男子生徒達がウエストの話をしている。ウエストとは、西高を中心としたグループだ。そして、幹部というのは兄達の事だ。


「花崎さんなんて半端なく強いらしいぞ?女にもモテるし、羨まし過ぎるよな。」


「ウエストの幹部は女に不自由してないだろ。顔良し、容姿良し、金も強さもあるし。」


「女遊びも激しいらしいぞ?毎日、違う女だって聞いた。彼女なんて作らなくても遊び放題らしい。」


「マジか?羨ましい。」


下らない話が私の耳に入ってくる。けど、その話は事実でもある。 兄達は彼女を作らない。


私は1-Sのクラスに入っていった。自分の席に着けば、数人の男子生徒が近付いてくる。


「如月向日葵?」


私は黒髪の男を見上げれば、鋭い視線を私に向けていた。


「何か?」


「俺、青山悠人(あおやま ゆうと)。ウエストの準幹部をしてる。新さんの妹?」


「それが?」


私は冷たい視線を向ければ、青山悠人が口角を上げた。


「頼まれただけだ。これから宜しく。」


「俺は青山春人(あおやま はると)。同じくウエストの準幹部。向日葵、宜しく。」


「真鍋一(まなべ はじめ)だ。宜しく。」


私は彼等を見上げた。鋭い視線を私に向けている。


「如月向日葵です、宜しく。」


私は彼等に同じような冷たい視線を向けた。彼等の口角が上がるのが分かった。


「新さんの妹だね?その瞳、新さんに似てる。」


「そう?初めて言われた。」


彼等が私から離れていった。周りを見渡せば、コソコソと女子達が話している。私は彼女達から窓の外に視線を向けた。


校庭には大きな桜の木が沢山植えてある。今が満開の桜を眺めた。


ガラッ。


教室に入ってきた担任に視線を向ければ、若いイケメンの先生だった。周りの女子が喜んでいるのが分かる。


私は教壇から桜の木に視線を向けた。


『ウエストの幹部は女に不自由してないらしいぞ。』


『女遊びも激しいらしいぞ?毎日、違う女だって聞いた。彼女なんて作らなくても遊び放題らしい。』



私の初恋は――――


琉生の大きな背中が私からドンドン遠ざかっていく。


「女に不自由してないか…………。」


私はそっと目を閉じた。春の心地好い風が頬を撫でていく。


私の初恋が散る―――胸を締め付けられるような高校生活の幕開けだった。

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