第76話

斎藤さんは吹き出したお茶で濡れてしまったテーブルを、台所から持ってきた布巾で慌てて拭く。



「前原さん大丈夫ですか火傷してないですか……っていつまでそんなもん見せてんですか早くしまいなさい!」



初めて斎藤さんに叱られた……。

しまいなさい、って、命令口調で……。


仕方なく私はおずおずとスカートをおろす。



「どうしでしたか」

「いやー……あのね、うん……」

「……いちころだって言ったくせに、嘘つき」



これじゃ見せ損だ。



「だってまさか僕で実践してくるとは思わないじゃないですか」



おろしたばかりのスカートの裾が、ぎゅっと握られるせいで皺がついてしまう。

だけどそんなこともどうでも良いと思うほどに、いっぱいいっぱいだった。



「……嫌でした?」



斎藤さんを見上げると、一瞬言葉に詰まったように私を見てから、しどろもどろに話し始めた。



「嫌じゃないっていうか寧ろご褒美……いやいやそうじゃなくて、」



斎藤さんは軽く咳払いする。



「前原さんは今おいくつでしたっけ」

「十七です高二です」

「僕は二十四です」

「見た目相応です。妥当じゃないですか」



そういう話じゃないんですよ。と斎藤さんが頭を掻いた。



「二十四ですよ次誕生日来たら二十五ですよ。四捨五入したら三十なんですよ」



もしかして斎藤さんは、年齢を理由にして私を振るつもりなんだろうか。

もしそうだとしたら、そんなの、諦めるに諦められない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る