第61話

お父さんやお母さんには勿論、隆二にもこのことは話していなかった。いや別に隠していたわけではなかったんだけど。



玄関先で隆二と五秒間くらい、お互い無言で見つめ合った。



「あ、ど、どこ行くの?」

「公園だけど。え、ていうかなんで百合がそこから……しかも鍵……まさかストー」

「カーじゃないよ!」

「じゃあもしかしてポテチ泥棒」

「でもないから!」



隆二の視線はがっちりとリッチコンソメのポテチだ。


私を指差す隆二の右手人差し指を握り、そっと下ろさす。


良からぬ疑いをかけられるのは嫌だから、ちゃんと説明しておこう。



「あのね、かくかくしかじかで」

「ほう。っておい、しばくぞ」

「あはは、ナイス乗りツッコミ」



今度は隆二を指差す私の右手人差し指を、ぺしっと振り払われた。私は優しく下ろしてやったのに。



「あのね、斉藤さん盆栽やってるんだけど、一週間出張だからって世話頼まれたの。それたけだよ」

「なんでただの隣人に鍵預けてまで……」



隆二はまだ私のことを疑わしい目で見ている。


無理もないかもしれない。

隆二のなんでって思いは当事者の私でさえ抱いてるものだから。



「そんなの私だって分かんないよ」

「大体斉藤さんが盆栽ってなあ、そんな嘘で納得するわけねーだろ」



むっ、とした。

だって私、嘘ついてないし。

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