好きなタイプは

第48話

あの映画以来、斉藤さんとはなかなか話す機会がない。


顔は合わせるっちゃ合わせるけど、お互いなかなかタイミングが合わないというか、私もなんかこう、避けてしまうというか。


それで、あまり会話ができない。



別に、最初の頃はそうだったし、その頃に戻っただけなんだけど。なんとなく、モヤモヤする。




「え、D組もう英単語の小テスト終わったのか!富井、何が出た!言え!」

「うわホーリー、汚いそれ!」

「protectしか覚えてないや。ていうか範囲少ないんだから普通に単語帳開いた方が良いよ」



それに反して富井くんとは、どんどん距離を縮めている。

正確に言うと富井くんと、ホーリーとちっちが、だけど。



「単語帳?そんなもの俺が持ち歩いてるわけないだろ!」



ないだろって、何を誇らしげに。



「ていうか百合ちゃんも単語帳開いてないけど良いの?次の時間なんだよね小テスト。もしかして余裕?」



富井くんが私に話を振ってきた。


「ああ。まえほっぴーはね、もう諦めてるから。こう見えてホーリーより馬鹿なの」


のに、私が答える前にちっちが答えた。



え、まじで?と丸い目をして意外そうに私を見つめる富井くん。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る