第33話

部屋に入ると着替えるより前にベッドに座ってさっき買ったばかりの雑誌を広げた。


斉藤さんが出ているページを探してめくっていく。



「百合」



扉が開いて隆二が入ってきた。



「ノックしてってばー」

「あ?お前が読みたがってたから持ってきたんだよ。ん、最新刊な」



隆二から【ランドセル物語】五巻を受け取った。

隆二が買ってる中で一番好きな漫画で、最新刊を心待ちにしていた。



「おお!ついに五年生編が出ましたか!感慨深いですな!」



表紙の恭太郎がまた更に大きく成長していて、それだけで既に楽しめる私。


隆二はベッドの上で開かれたままの雑誌に視線を下ろして、そのまま私の隣に腰を下ろして雑誌を手に取った。



「何見てんの。斎藤さんが載ってるって雑誌?」

「そう」

「斎藤さん載ってるページ、やっぱ少ないな」



ぺらぺらとめくられていくページ。



「やっぱ周りがイケメン過ぎるんだなー、すげえな。確かに斎藤さんはこの中だと普通だわ」

「……私は一番格好いいと思う」

「え?」



隆二が雑誌から視線を外して私を見た。

ぱちぱちと瞬きを繰り返している。



「お前、やっぱ斎藤さんのこと好きなの?」

「百合ー、隆二ー、御飯できたよー!」



隆二の問いかけのすぐ後に、台所からお母さんの大きな呼び声。

反射的に「はーい!」と返してベッドから立ち上がった。


まだ座ったままの隆二を見下ろす。



「ばっかじゃないの?」

「だって斎藤さんがこの中で一番格好良く見えるって、それもう」

「行くよ!」



立ち上がらない隆二の腕を無理矢理引っ張って立たせた。


こういう話、苦手だ。

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