第30話

私がラインの返事をしたわけではないけれど、あまりに嬉しそうで、しかもそれを真っ直ぐ私に伝えてくれる富井くんを見ていると、すごく申し訳ない。


申し訳ないからこそ、余計に本当のことを言えなくなる。


本当に、どうしてこの人は私のことが好きなんだろう。




「じゃあね!」



今日も嵐のようなマシンガントークのあと、ひらりと手を振って教室を出て行った。


私はぼんやりと富井くんが出て行った扉の方向を見つめていた。



「あんだけ喜んでるんだ。取り敢えず行ってこいよ」

「これで、あの返事がまえほっぴー本人のものじゃないって知ったら、富井くんショックどころじゃないよ」



富井くんのことだから、きっと事実を知っても私を責めてきたりしないんだろう。

ただ笑って「なんだ、残念」とか言うと思う。


でも絶対、すごく傷付ける。



「なあまえほっぴー。俺が思うに、あいつと付き合うのも悪くないんじゃねぇの」



ホーリーの言葉に俯いていた顔を上げる。

ホーリーはわりと真剣な顔をしていて、ちょっと気持ち悪い。



「……この間と言ってることちがくない。イケメンは全員敵でしょ?」

「俺にとってはな。でも別にお前は関係ないし、それにあいつ、なんかちょっと痛いとこあるけど良いやつっぽいし」



良い、やつ……。

そうなんだよね、かなり変わったところはあるけど、実際すごく優しくて良い人には変わりないんだよね。


それはここ数日富井くんの側にいた私は、嫌でも知っていることだった。

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