第4話【寄り道】

 昼休み、職員室中に携帯の着信音が鳴り響く。


樺本かばもと「はいはい。出ますよ〜。ちょっと待って」


世界史を担当する女性教師、樺本は4時限の授業を終え職員室に帰ってきたばかりだ。彼女の両手は、教科書と小テストのプリントで塞がっている。 

自分の机にプリントを置いた瞬間携帯電話の着信音はプツリと切れた。


樺本「もぅ、出るって言ったのに〜」


と不満を声に出す。

隣の席で、今朝コンビニで買った昼食のホットドックを頬張りながら小テストの採点をしていた。

数学の女性教師、龍骨りゅうこつは手を止め口をもごもご言いながら樺本に何か訴えている。

しかし樺本には何一つとして伝わらないのである。樺本は呆れた顔をして—————。


樺本「……龍骨先生。食べるか、喋るか一つにして下さい。何言ってるか分かりません」


彼女は食べる事を優先し、3分の1程残ったホットドックを一気に口の中に押し込む。一瞬喉に詰まりそうになったのか、左胸をトントンと叩く。

急いで食べなくても取ったりしないのにと樺本は龍骨の食べる終えるのを待つことにした。


龍骨「かばちゃんが、授業している時間ときに何度も着信あったわ。急ぎかも知れないから掛け直したら?」


樺本「そうですか。ありがとうございます」


礼を述べ、早々に樺本は携帯電話の画面に映る着信履歴を確認し掛け直す。

相手はすぐに電話に出てくれた。


樺本「何度も掛けてくれたのにごめんねぇ。勤務中(授業中)は電話出れないのよ。……でどうしたの?……うん。……うん。………場所は?……あぁ、え?でもあの店、店長が高齢だから閉店したんだよね?……本当マジ?!そんなの行くに決まってるし!……わかった、じゃあ後で〜♫」


通話の終えた樺本は上機嫌で鼻歌まで歌い出した。彼女は昼食後残りの授業を終えると早々に学校を出て家に帰らず、老舗の雀荘へ向かうのだった。


外伝4話End

お題【帰る】

出題日;2025年1月6日

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外伝とあるアプリで出題されたテーマから紡がれるセカンドストーリー 砂坂よつば @yotsuba666

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