第18話

その日の午後、キャロルと一番仲の良かったカレンというおばあさんが、病院に駆けつけました。お母さんのティナは、キャロルがとても回復するとは思えず、キャロルが一番親しかったカレンに電話をして呼んだのでした。カレンはハンカチを目に当てながら、マークに小さい声で言いました。



「マークは本当によくキャロルの世話をしてあげたね。マークと暮らすことができるようになって幸せだとキャロルは言ってたよ。キャロルの一番の自慢はマークだったんだよ」



隣に座っていたティナも静かな声で「マーク、今までグランマの世話をしてくれて本当にありがとう。大変だったわね......」とお礼を言いました。



マークの胸の内は複雑でした。あれ程、人々の評判を気にしていたマークですが、今日はカレンやティナの賞賛の声、お礼の言葉を素直に喜べません。喜べないどころか、マークは何か悪いことでもしたかのような気持ちになっていました。どうしても最近キャロルをほったらかしにしていたことが心に引っかかるのです。



マークは力無く「違うんだ。僕は嘘つきだったんだ。僕はみんなが見てない時は、全然グランマの世話なんかしてなかったんだ」と小さな声で言いました。


カレンはビックリして「おやおや、マーク。一体どうしたんだい?どうしてそんなことを言うんだい?」と聞きました。



マークはいたたまれなくなり、いきなり病室から走り去って出て行きました。カレンは「自分のせいで、キャロルがこんなことになってしまったと思ってるのかねえ?かわいそうに。よっぽどショックだったんだねえ」と再び目にハンカチを当てました。



ティナも「マークは子供なのに、ずっとキャロルの世話を頑張ってくれました。やってられないと思う時だって当然あったでしょう......」と息子をかばいました。



病室から出て行ったマークは、その後病院から出てしばらくの間走っていました。そのうち走り疲れたので歩いていくと、小さな公園がありました。



ちっちゃい子が2、3人遊んでいるだけの静かな公園です。近くのベンチにお母さんらしき人が座っていて、子供達が遊んでいるのを見守っているようです。

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