序章

第1話

「マークや。クリスマスキャンドルを飾りたいから買ってきておくれ」



「えぇーッ、めんどくさいなあ。今日外すごく寒いんだよ。お使いなんか行きたくないよー」



「マークや。そんなことを言わないでおくれよ」



「グランマ(お婆ちゃんという意味)、クリスマスキャンドルなんか飾ってどうするの?いきなりそんな子供みたいなこと言わないでよ。ボクは11才だけど、もうクリスマスキャンドルなんか欲しがらないよ」



「マーク。たのむからお使いに行ってきておくれ。キャンドルに火を灯して並べたら、きっとキレイだよ。あたしゃ、どうしてもそれが見たいんだ」



「キレイなのはわかるけど、それを準備する僕の身にもなってよ。めんどくさいったらありゃしない」



「マークや。お願いだよ。あたしにとっては、これがきっと最後のクリスマスになるんだろうから......」



「えぇーッ!?さッ、最後って......わかったよ。もうわかったよ、グランマ。買ってくればいいんでしょ、買ってくれば。じゃあ早速行ってくるよ......あー、それからグランマ。言っとくけどグランマのクリスマス、今年が最後じゃないよ。そんなこと言っちゃダメだよ。来年も、その次の年も、またその次の年もグランマにクリスマスはくるんだからね。じゃあ行ってくるよッ」



「ああ、気をつけてね」



おばあさんはフッと笑ってしまいました。



「なんだかんだ文句は多いけど、あの子はいい子だよ」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



アメリカ人少年のマークの家は母子家庭です。これまでお母さんのティナと2人で暮らしていました。このお婆さん、名前はキャロルといいますが、マークの家から車で1時間程のところで1人暮らしをしていました。



キャロルお婆さんは元々片足が少し不自由でしたが、さらに重い病気を患ってしまいました。最近病気が一段とひどくなってきたので、マークとお母さんのティナとでキャロルを引き取ることになりました。

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