最後にはラブレターを
姫野
言えなかった後悔を
私には忘れたくても忘れられない人が居る。高校卒業と同時に付き合った彼。私の人生を大きく変えた人物。これを読んでる人の中にも忘れられない人が居る人はどれくらい居るのだろう。案外多いのかもしれない。一緒に行った場所、彼の匂い、好きだった音楽、仕草、彼から言われた言葉。それを思い出すだけで昔の記憶が嫌なほど蘇ってくる。幸せな思い出も、苦しかった思い出も全て。
毎晩失恋ソングを聞いて泣いていた私。ある日、推しの配信者にひとつの提案をされたことがある。
「ラブレター書いてみたら?」
以前、その配信者のリスナーに好きな相手へ向けたラブレターを書いたから読んでほしいと言われたことがあるそう。それを思い出して、彼への未練が捨てれない私にその提案をしてくれた。
今まで彼に言いたくても言えなかった事が沢山あった。それを手紙にして自分なりの言葉で伝える事で"言えなかった後悔"が無くなればいいと思って、ラブレターを書き始めた。
ラブレターを書く事を決めて早3ヶ月が経った今、やっと書き終わった。毎日机に向かって紙に文字を書いてはいたが、彼との事を思い出して泣く日が続いて3ヶ月もかかってしまった。
書き終えてから、推しの配信者にラブレターを提出して配信中に朗読してもらった。
最愛だった人へ
この手紙があなたに贈る最後のラブレターです。あなたに言えなかった、届かなかったことをここに全て書いて、10代最後の恋愛に終止符をうちます。思い出して泣く夜はもう来ませんように。そう願いながら贈りたい言葉を考えてます。長くなるけど、最後まで読んでくれると嬉しいです。
覚えてますか、私とあなたの恋が動き始めた日の月は満月だったこと。でも、私達の関係が終わった日は新月。始まった時は明るく照らされていたのに、関係が終わった時は月は私達を照らしてくれなかった。全てが終わってしまったのだと、改めて感じた瞬間でした。あなたと過ごした、1年半の日々の思い出が頭に流れてきて声を出しながら泣き崩れた事、今でも鮮明に覚えてます。車を走らせて家に着いたのはあなたとお別れをした6時間後でした。
この恋愛が全てキラキラした恋愛ではなかったよね。お互い、沢山傷つけたし沢山傷付いた。でも、幸せでした。今までこの想いを友達にも誰にも伝えてこなかったけど、私も前に進みたいから伝えます。ありのままを伝えます。
私は、あなたと結婚したかった。二人で話してた将来の話、あなたと叶えたかった。あなたの一番になりたかった。ずっとあなたの隣で笑っていたかった。あなたと幸せになりたかった。そう思うぐらい、この恋愛は大恋愛でした。10代、最初で最後の大恋愛でした。愛してました。これがあなたに伝えたかった私の想いです。
この想いは一生報われません。でも、あなたに最後のラブレターを送ってやっと私も前に進める気がします。私の事好きになってくれてありがとう。付き合った思い出は記憶の宝箱に鍵をかけて閉まっておきます。出会ってくれてありがとう。このラブレターを最後まで読んでくれてありがとう。
最後に、愛していた人。結婚おめでとう。末永くお幸せに。
杏より。
朗読が終わってから、なぜか肩の荷が降りた気がした。それはきっと、最後にラブレターを書いたから。言えなかった事を全て書けたから。例え、この思いが一生彼には届かなくてもこのラブレターを書いたことに意味がある。私はそう思う。
ずっと残ってた後悔、未練が報われた瞬間だった。
忘れられない人が居る人はペンと紙を用意して少しでもいいから書いてみてほしい。文字にする事によって気持ちの整理ができるかもしれない。言えなかった後悔を書かないで残しておくには1人だけ背負ってる物が大き過ぎるから。これ以上、貴方が辛い想いをしないように。彼を思い出して泣く夜が少なくなるように。推しの配信者が提案してくれたように私も、貴方に最後のラブレターを書く事を提案したい。
最後にはラブレターを 姫野 @dio0915
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