第2話
翌日も、薄曇りだった。
起き上がって台所に向かい、水を飲む。
昨日と同じグラスを使い、昨日と同じ水を飲んだ。
冷蔵庫を開けてパンを取り出す。袋の口をねじり、また元の位置に戻す。
そのまま一枚を半分に折り、小さく噛んだ。
服を着替えて外に出る。
玄関の引き戸を閉めると、少し遅れて音が響いた。
足元は湿った砂利で、わずかに靴底が沈む。
坂道をゆっくり下り、小川のそばを歩く。
水の音はいつもよりはっきりと聞こえたが、川面は穏やかだった。
鳥居をくぐり境内に入ると、地面がやけにすっきりとして見えた。
落ち葉がほとんどなく、昨日とは明らかに違っていた。
そのまま石段を登り、いつもの場所に立つ。
手を合わせ、目を閉じる。
風が枝を揺らし、鈴がわずかに鳴ったような気がしたが、はっきりとはわからなかった。
その音が耳に残った。
昨日も一昨日も、そんな音はしなかった。
目を開けて手を下ろすと、境内は変わらず静かだった。
もう一度地面に目を落とすと、掃き集められた葉が境内の端に小さな山を作っていた。
踏まないようにそれを避けて、来た道を戻った。
帰りの坂を登る途中、小川が昨日より澄んでいるように見えた。
底の小石のひとつひとつが、輪郭を鮮やかに見せていた。
家に着き、玄関を開けると、再び静けさが戻った。
中に入り、玄関を閉めると、小川の音も風の音も消えた。
部屋に戻り、何をするでもなく床に座った。
壁の模様をぼんやりと見ているうちに、神社の境内や落ち葉のことは少しずつ意識から遠のいていった。
時計はまだ止まっている。
外の曇り空は、朝より少しだけ明るくなっていた。
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