神社

@kan-pan

プロローグ

書き終えても、何も変わらなかった。


何かが変わると思っていたわけじゃない。

ただ、書いているあいだだけ、少し安心した。

何もしていないわけではないと思えた。


それは毎日神社に行き、手を合わせている感覚に似ていた。

祈ってはいない。神も信じていない。願いもない。

それでも毎日、気がつけばその場所に立ち、静かに手を合わせている。


理由はわからない。

自分でもよくわからないまま続けている。

もう他にすることがなくなったからかもしれない。


仕事を辞め、東京を離れて山奥に来てから、誰とも会っていない。

スマホは電源を切ったままだ。

それでも、なぜか毎日手を合わせる。


祈っているわけではないのに。

それだけが、ただ静かに続いている。

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