第3話 拠点探し
さて、俺たちは巨大トカゲを食した。
この身体では食事も一苦労。
なにせ、肉を掴んだ瞬間、切り刻んでしまう。
だから、肉を地面に置き、そこに口を運んでいく、犬食いをせざるを得なかった。
「あんた、犬ね。あんたは私の畜生よ。
ははははっ!」
くそっ!バカにしやがって!
そんなこんなで俺たちは野宿した。
当然、屋根も壁もない。
まあ、屋根はあるのかな、大きな木の下で寝たから。
「まったく!なんでこんなところで寝なきゃならないワケ!
全部あんたのせいよ!
私の寮の荷物も全部おいてきちゃったし!
着替えだってそこにあるのよ!
どうしてくれるの!」
はあ。またサラの愚痴だよ。
俺だって、勝手に召喚されたんだ。文句の一つや二つはある。
でも、可愛いは正義。サラが正義なんだ。とほほ・・・。
「サラ。どうやら俺は強いらしい。
何とかなるさ。」
「なんとかなってないから怒ってんのよ!!!」
ま、まあ、生活の質が向上するのはこれからさ。
焦らない焦らない。
「ま、まずは拠点探しだな!
住めそうないい感じの洞窟なり空き家なり探そう!」
「あんた、転生したばっかだって言うのに、変に冷静なのね。」
「サラ、どこかいい場所知らないか?」
サラは人差し指をあごにあて、しばらく考えた。
「そうだわ!廃墟の洋館があるって聞いたことがある!
でも、そこは既に魔物の巣窟らしいわ。
あんた、強いんなら退治しなさい!」
へいへい、わかりましたよお嬢様。
「じゃあ、その洋館とやらに向かうとするか!」
俺たちはその洋館へと向かっていった。
「ていうかあんた、召喚武具の分際で仕切らないでくれる?」
召喚武具?
そういえば俺が転生したとき、「最強の杖とか、法衣とかそういう武具を期待してたんだけど!!!」
とか言ってたな。
「本当は強い武具が手に入るはずだったのか?」
「は?そんなことも知らないの?
そうよ。本当なら、この私にふさわしい、最強の装備が召喚されたはずなの。
召喚師はね、16の歳に自身の相棒となる装備を召喚の儀式で召喚する習わしなの。
で、あんたみたいな冴えない転生者が出てきて、もうがっかりよ。」
そういうことだったのか。
「しかし俺、冴えない転生者の割には、強くないかい?」
俺は少し天狗になって言った。
「ふんっ!そうねえ・・・訂正するわ!『脳筋』の冴えない転生者ね!」
ちぇ、素直じゃねーの。
そうこうしているうちに、洋館へ着いた。
「ここが例の洋館ね。
いかにも陰気臭い、魔物が好きそうな場所ね。
あんた、入口の扉開けてきなさい!
仮にも私の武具でしょ!」
人使い、いや、武具使い?が荒いお嬢さんだこと。
「はあ、わかったよサラ。」
サラは意外と怖がりなのだろうか、俺の影に隠れている。
ゆっくりと洋館の扉を開ける。
と思いきや、扉に触れた瞬間、扉は切り刻まれた。
バタンッ!!!
そして切り刻まれた扉は思い切り倒れた。
「ちょあんた!!!
なんでこんな豪快に突入するワケ!?
もっと慎重になりなさいよね!」
俺の後ろからサラが文句を垂れる。
「すまない、俺の能力、常時発動なんだ・・・。」
そうこうしていると、洋館の中にいた魔物どもが一斉に俺たちに視線を向けた。
熱い視線だ・・・!
これが美少女からならうれしいんだが、あいにく、化け物。
サラがファイアで洋館内を照らすと、化け物たちの姿があらわになった。
ミイラ男、ゾンビ人間、狼、コウモリ、ゴースト・・・。
「き、きゃああああああ!!!」
サラはお化け屋敷に来た女子高生のごとくはしゃいでいる、もとい、驚いている。
やっぱりサラ、普段は強気なくせにビビりだったんだ。
「あ、あ、あ、あんた!
なんとかしなさいよ!」
なんとかって言われてもなあ。
ミイラ男にゾンビ人間、狼はなんとかなるだろうさ。
でも、ゴーストってどうなんだ?
俺の刃の身体で切り刻めるのか!?
そんなことを考えている隙に、魔物どもが襲い掛かってきた!
が、案の定、俺に触れた瞬間、魔物どもは肉塊に変身していった・・・。
そして、ゴーストが来た!
斬れるのか!?
「うおーーーーん!」
スパンっ!!!
「うおうおうおーーーん・・・。」
・・・ゴーストも斬れちゃったよ。
もしかして俺、斬鉄剣かなにか?
そんなこんなで、魔物どもは勝手に突進してきて、勝手に恐れおののいて、勝手に逃げていった。
はあ、戦った気がしないなあ。
まあ、最強スキルをくれてありがとう、神様。
と、心の中で礼を言った。
「あ、あ、あ、あんた!
よくやったわ!
それでこそ私の畜生!ペットね!」
ぺぺぺ、ペット!?
まあ、ペットならマシか。
可愛がってもらえるってことだし!
プラス思考プラス思考!
さあて、一仕事終えたし、洋館のベッドにでも・・・。
「あんた!休んでる暇なんてないわよ!
掃除よ!そ・う・じ!
召使であるあんたがやるべきでしょ?
私、ほこりとか蜘蛛の巣とか大っ嫌いなの!
いいわね!」
おいおい、今度は召使かよ・・・。
武具使いの荒いお嬢さんだこって。
そうして、俺は広い、ひろーい洋館を掃除した。
当然だが、掃除道具を掴んだ瞬間、粉々になる。
だが、俺のまとっているボロい服を手と掃除道具の間に噛ませれば、掃除道具は粉々にならない。
そんな感じで掃除道具とボロい服を駆使して、俺は洋館中を掃除した。
その間、サラはベッドでぐっすり眠っていた。
そうして、俺はやっとの思いで掃除を終えた。
はあ、ご褒美に、サラの横で寝るくらいいいよね?
俺はボロい服を全身にぐるぐるに巻いて、サラとベッドに危害が加わらないようにして、サラの傍にスッと横になり眠りについた。
翌朝、俺はベッドから落とされ、地べたで寝ていたことは言うまでもない。
「なんて破廉恥なの!!!
あんたね、召使がご主人様と同じに寝れるわけないでしょ!!!」
なお、俺の能力により、平手打ちはされなかった。
<作者あとがき>
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