第2話 逃亡劇

俺、やっぱ強いのかも!


サラもびっくりしている様子。


サラを見返すチャンスだ!


俺は雄たけびを上げ、近衛兵のどてっぱらに拳を思い切りぶつけた!


ドス!!!


え?


近衛兵のみぞおちに風穴があいた。


血が噴き出す。


ウソだろ・・・。


俺、人殺しちゃったよ・・・。


でも、そんなことを言っている場合じゃない。


だって、やらなきゃやられるんだ。


しかし、近衛兵の一人を殺したのち、その他の近衛兵は腰が引けたようで、逃げていった。


「増援を呼べ!やはり転生者!

 並大抵の武力では歯が立たん!」


ふう。ひとまず安心か・・・。


サラの方に目をやる。


「サラ!大丈夫か?ケガはないか?」


「ふん!あんた、さすがに転生者みたいね。

 よく私を守ったわ、褒めたげる。

 でもね、あんたは転生者なんだから、強くて当然!私を守って当然よ!」


くうう・・・、可愛い顔して、ツンツンだな。


惚れさせる道のりはまだまだ長そうだ・・・。


サラが続ける。


「そんなことより、もたもたしてると増援が来るわ!

 はやく逃げないと!」


それもそうだ。


俺たちは部屋をあとにし、学校の裏門へと急いだ。


しかし!


裏門には魔術師やら剣士やらががっちり守りを固めていた!


「ルーカス先生!そこどいて!

 私、あなたは殺したくない!」


「サラよ、許せ。

 教師として、異端を逃がすわけにはいかないんだ・・・。」


全身鎧の大男が口を開いた。


あいつがサラの先生、ルーカスか。


うーむ、下手に殺したらサラが悲しんでしまうよなあ。


でも、相手は俺たちに襲い掛かってくる。


よし!今度は軽く殴ってみよう!


カウンターで俺が斬られても、たぶん俺、硬いから大丈夫!


俺は魔術師と剣士の軍勢に単騎で突っ込んだ!


「ちょ、あんた!

 調子乗りすぎ!

 相手は魔術、剣術のプロよ!」


ふん、俺は最強転生者なんだ!


どうってことないさ!


俺は、ルーカス先生のふところに入り、軽くパンチした。


子供空手教室の先生が、子供に正拳突きを軽くするほどに。


と言っても、イメージわかないか・・・。


まあ、とにかく、撫でるようにパンチした。


すると・・・。


メリメリメリメリ・・・。


鎧をいとも簡単に貫通し、ルーカス先生のみぞおちに風穴が空いてしまった・・・!


おいおいおいおい!


俺、ルーカス先生に軽く触れただけだぞ!?


これじゃ俺のパンチ、電動ドリルみたいじゃねえか!


ルーカス先生のはらわたがドロドロドロっと腹からこぼれ落ちる。


俺はとっさにサラの方を振り返った。


サラは両手を口に当て、唖然としている・・・。


や、やっちまった・・・。


サラの恩師を殺し、俺の評価駄々下がりだ。


「ル、ルーカス先生・・・。」


周りにいたその他の術師、剣士は恐れおののき、校内へ逃げていった。


俺はサラのもとへ駆け寄る。


「サラ・・・そのう・・・悪気はなかったんだ。

 殺す気もなかった。ただ、俺のこぶしがどういうわけか、強すぎるみたいなんだ。すまない・・・。」


バチンっ!


俺はサラに平手打ちを食らった。


まあ、そうだよな。


てか、俺の体が硬すぎるせいで、平手打ちが全然痛くない。


ん?


なんと、平手打ちしたサラの右手が傷だらけではないか!


「痛い!!!

 あんたの皮膚、どうなってんのよ!」


俺の身体、触れたものを切り刻んでしまうらしい。


まさか俺、日本刀のように鋭く硬い、刀人間なのではないか!?


俺は身にまとっていたボロい服をびりびりっと破り、サラの右腕に巻いてやった。


「すまないサラ。

 俺、刀人間みたい・・・。」


サラの柔肌に触れることができないとか、なんだよこのクソ能力!


たしかに戦闘では役に立つだろうが、それ以外不便すぎる!


てか、この刃のような俺の皮膚に耐えうるこのボロい服、実はすごいんじゃね?


神に授けられた俺専用の服なのかもしれんな。


そんなこんなで、俺とサラは学園の裏口から逃げていった。


しかし、飯も泊まる場所もない。


この先どうやって生きていけばいいんだ?


「なあサラ、俺たち、これからどうしよう。」


「ふんっ!知らないわよ!」


ルーカス先生を誤って殺してしまったこと、さすがに怒っている様子。


いいとこ見せて機嫌を直してほしいところだ。


うーむ。


早歩きのサラに、あとを追うように付いていく。


すると・・・。


ドッドッドッドッ!


「きゃああああ!!!」


なんだ!?


なんと、体長3メートルはあるだろうか、巨大トカゲが俺たちに向かって突進してきているではないか!


「学園の外は魔物だらけなの!

 あんた知らないの!?

 あんな化け物、私には手に負えないわ!」


まじ?転生したばかりでこの世界のことは何も知らない。


この世界にはこんな化け物がわんさかいるの?


そうして、あっという間に巨大トカゲは俺の眼と鼻の先まで来た!


すると。


スパスパスパスパッ!!!


巨大トカゲは俺に突進した勢いのまま、真っ二つになった。


俺に触れただけで。


「あ、あ、あ、あんた!

 なんて化け物なの!!」


俺は頭をポリポリかきながら、巨大トカゲから救ったんだから、そこは素直に褒めてほしいんだが・・・と思った。


そうして、サラの初級魔法・ファイアで巨大トカゲをステーキにして、俺たちは空腹を逃れたのであった。


「なんてマズい肉なの!?」



<作者あとがき>


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