上と下
弦本スージー
上と下
宇宙は地下深くにあると教会は説く。すべての真理はそこに眠り、人に与えられた果実であり、枷でもあると。しかし、少女はその教えを信じなかった。「上」が禁じられた地下ではなく、空であり、広大な宇宙だと感じていた。透き通った「上」は、「美しい」という言葉では収まりきらない輝きを放っていた。
炭鉱夫の少女は、今日も地下を掘る。宇宙を目指して。だが、彼女の心は疑問で揺れていた。なぜ皆は地下に宇宙を見ようとするのか。なぜ「上」を見上げないのか。
「上を見てよ、お父さん、お母さん」
彼女は両親に訴えた。だが、返ってきたのは冷たい言葉だった。
「上など見てどうするんだ!」
その瞬間、彼女は悟った。親には「上」の輝きが見えないのだ。見ようともしないのだ。少女の小さな発見は、誰にも理解されないまま、地下の闇に埋もれていった。
一方、白銀の淑女は知っていた。宇宙が地下になどないことを。だが、彼女は目を封じられ、声を奪われ、ただ静かに空を見上げるだけだった。教会はなぜ、真実を隠すのだろうか。少女は今日もシャベルを手に問い続ける。答えは、遥か「上」にあった。
上と下 弦本スージー @suzy_tsurumoto
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