ゴレット・レイジ
こいえす
第1話 カレン
何千万年も昔から、人々はゴレットと共に暮らしてきた。
ある日、不思議な赤い石が発見され、誰かがゴレットを生み出したのだ。
それが全ての始まりだった。
ゴレットは人々の生活を豊かにし、人類は地上で最も繁栄した生き物となった。
魔物を駆逐し、土地を開墾し、領土を広げ、そして衝突した。
人類は、ゴレットを身を守るためではなく、争うために利用するようになった。
昔起きた戦争の名前を、誰も知らない。
しかし、人類は同じ過ちを繰り返そうとしていた……
*
ゴーン、ゴーンとけたたましい教会の鐘が鳴り響く。
私は毛布を深く被り、再び眠りに落ちようと試みたが、それは我が母によって打ち砕かれた。
「カレンー!」
少女の母親は階下から大声で愛娘の名を叫ぶ。
しかし、返事はない。
彼女は冬眠中の芋虫のようにただうずくまっていた。
「カレン!」
先ほどよりも大きな声で呼び掛けるが、やはり反応は無い。
「全くもう!」
少女の母親──アロマ・デロワは、小言をぶつくさ言いながら階段を上がった。
扉を開けると、書類と衣類が散らばった、女の子らしさのないだらしない部屋が目に映る。
アロマは大きくため息をつくと、カレンのベッドに歩み寄り、一気に布団を引き剥がした。
「カレン、いつまで寝てる気なの?いい加減起きないと遅刻するわよ!」
遅刻──という言葉に反応したのか、カレンは飛び上がり、声を上げた。
「遅刻!? 私、遅刻なの!?」
カレンは頭を抱えて、書類の中に埋もれた鞄を探す。
「まだ大丈夫よ。あなたはいつもそそっかしいんだから……」
アロマは呆れた様子でカレンを見ている。
「良かった〜。今日に限って遅刻なんて最悪だもんね」
「どうせ夕べ興奮して寝付けなかったんでしょう。今日は待ちに待った成人式だものね。教会に行って、ゴレム・ストーンを貰って初めて一人前になれる──それなのに、まだお母さんに起こしてもらってるのはどうなの」
「えへへ」
アロマは肩をすくめ、カレンの散らかった服を片付ける。
「部屋はいつも綺麗にしなさいって言ってるでしょう。さっさと着替えたら下に降りてきなさい。食事の支度はもうできてるから」
アロマは再び大きくため息をつき、部屋を後にした。
カレンは着替えながら、昨夜遅くまで考えていたことを思い出していた。
それは自分のゴレットについて。
15歳の成人式にて、子どもたちは正式に「大人」として認められ、ゴレットを操る資格を得る。
ゴレム・ストーンはその媒体であり、自身の情報を記録する身分証でもあった。
「ルカはもうすぐ来るのかな」
カレンは期待を胸に、鏡の前で身支度を整える。
ゴレム・ストーンと同じく、深い赤色をした瞳は希望で輝いていた。
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