第2話 高槻という街と、りおさん
高槻という街は、大阪府の北部にあり京都、大阪へのアクセスがよい、いわゆるベッドタウンである。最寄りの阪急の高槻市駅からは大阪ミナミへも道頓堀にほど近い日本橋まで直通で行ける。京都の四条河原町や嵐山へも、休日であれば金券ショップで土休日切符を買えば220円で行ける。駅の周りには飲み屋街もあり商店街も賑わっている。人口35万人程度の街だが松阪屋もある。
3月末に単身寮に引っ越した私は、開放感に満ちあふれていた。会社の寮なので同じ会社の社員が居住しているわけだが、不思議とほとんど顔を合わすこともない。同じ寮だからといってお付き合いは全くなく、プライバシーが保たれている。
4月から大阪梅田の事務所に通うことになる。明後日からの新しい生活のスタートが待ち遠しい。 加入したばかりの出会い系アプリを起動した。プロフィールを整える。 「名古屋から単身赴任してきたハルといいます。京阪神初めてなので、いろいろ教えて下さい。できれば特定の一人だけを支援したいと思っています。」こんな感じかな。写真も遠めの写真を登録しておこう。
しばらくすると、「足跡」とか「イイネ」とか「タイプ」に続々と女のコからアクセスが入り始めた。
「足跡」とは、自分のプロフィールを見てくれた異性が自分の履歴に残る仕組みで、「イイネ」「タイプ」も同様に好意を持ってくれている異性を知らせてくれる仕組みである。
「俺って捨てたもんじゃないじゃないか?」
有頂天になった私はアクセスしてくれた子にお礼のメールをひたすら打ちまくった。それがマナーだと思っていたからである。女性がメールを打っても無料だが男性が打つと1回50円かかる。みるみるポイントが減り1日で3000円も使ってしまった。大抵が「体の相性が知りたいので最初だけホ別2でどうですか?」とか「まずはお食事からお願いします。一万円で」というような内容だった。 「ホベツ2って何だ?」調べてみるとホテル代は別で2万円で体を売ります。という意味らしい。何故、食事を奢った上に1万円も払わないといけないのか?よくよく考えてみれば50歳のオッサンがモテるわけがないのである。体を売りたい女性が、比較的金払いの良い中高年男性に群がっているわけだ。いわばカモだと思われている。精力も若い男子に比べれば弱いので長い時間求められることもない点も好まれる要因かもしれない。プロフィール画面に「NEW」とか初心者マークが付いていてサイトに加入したての者はすぐわかるようになっている。 でも冴えないおじさんが若い女のコと遊んでもらうには多少の出費は仕方ないな。自分は酒もタバコもやらず、浮気もしたことなく真面目にやってきた。一年や2年くらい遊んでもバチは当たらんだろう。
そう思いながらも、アクセスの多さに戸惑っていると、一人のメールが目に止まった。「困っています。相談したいことがあります。ライン交換できませんか?」「りお」と名乗る顔写真の無い女のコだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます