ハルと美和
@hal6815241
第1話 序章
私は名古屋に在住している冴えない、とある金融機関に勤めるサラリーマンである。
名を小川晴夫という。36歳の時、6歳年下の妻と見合いで結婚し小学2年の娘と中学生になろうとする息子がいる。
もう50歳になる。
家内とは破綻している。家内は掃除や後片付けができないのだ。私もそういったことが得意でないこともあるのだが、テレビでよくやるゴミ屋敷の部屋をさらにパワーアップさせた感じの家がまさに我が家である。
当然、私の母とも折り合いが悪く、あるとき、母にそれを指摘されたことに逆ギレし、母の人格を罵った。折り悪くパーキンソン病で、生死を彷徨っていた私の父がその翌日、亡くなってしまった。父がいる前で喧嘩をした訳では無いが、その事実が明るみになると家内は私の実家と一族とは絶縁状態となってしまった。私も一刻も早く離婚しろと母や姉からも言われるのだが、子供たちとの生活を捨てきれないのと、離婚することによって会社からの生活手当が年間100万円近く減ることから踏み切れないでいる。年収が下がってしまう上に、財産分与と養育費を払うのは現実的ではなかった。
このまま、抑圧された生活の中で朽ちていくんだな。と漠然と思っていた。
女性とは家内に娘を身籠らせて以来、肌を合わせていなかった。
会社では専門的な職場であったことから、結婚して以来、名古屋以外の地で勤務したことは無かった。15年前に営業でトラブルを起こして以来、ずっと冷や飯を食らわされており、引き取り手も無かったのだろう。
そんな私に2021年3月、大阪事務所への異動通知が出た。数年前に、ある支店でその地域の社員の横領が発覚し、長く一箇所の拠点に留まり同じ仕事をしていくのを解消していこうという動きもあったからである。
また、私の娘は家内に似てエキセントリックなところがあり、友達が少なく対人関係に問題があり転校は難しかった。そういう事情と住宅ローン減税の権利を放棄するのも勿体ないので、単身赴任をすることにした。
不思議なことに何故か気持ちが昂ぶってくるのを感じた。抑圧された生活から解き放たれ自由になるからだろうか。自分は酒も飲めず、友達も少ないのであまり遊んだ経験がなかった。親友を5年前に海の事故で失ってからは会社と自宅と実家を行き来する味気ない毎日だった。
そんなことから大阪では少しだけ遊んでみようと思った。幸い8年前に新居を購入する前に住んでいたミニ戸建を賃貸しており、その家賃収入と株式を評価額2000万円程度所有しているため、数年なら少しは遊べるだろうと算段していた。
私は独身時代はデートの時だけコンタクトレンズを付けていたが結婚してからはずっと眼鏡を掛けていた。目に負担がかかり疲れるからである。そんな私が13年振りにコンタクトレンズを買い、興味のあった出会い系サイトに加入した。
もうすぐ高槻の単身寮に引っ越しだ。少しワクワクしてくるのを感じた。
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