特権

第1話

カイが人間として帰ってきて、またあの頃みたいに一緒にいられることがただただ嬉しい。あたしがそういえば、フッて笑って「幸せそうでなによりだ」頭を撫でてくれるカイ。








そんな恋い焦がれていた幸せな日々を過ごしていると、








「くるみ、ちょっとこっち来い。話がある」








ソファーに座ったカイがあたしを呼んだ。









「なに?」








洗っていた食器をそのままにして、手を洗う。そして、濡れた手をタオルで拭きながらカイの隣に座った。









「驚くだろうけど聞いてくれ」


「……な、なに?またどっか行っちゃうの……?」








カイの雰囲気がなんとなくあの日の、カイが吸血鬼の世界に戻った日のことを思い出させた。それに不安を感じてもっていたタオルをギュッと握ると








「違う。早とちりして不安がんな」








力の入ったあたしの手の上に、カイの手のひらがそっと乗った。それだけでフッと力が緩む。

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