第27話 壺へ魂を売る者たち
閑静な住宅街にルネサンス様式で出来た建築の教会が佇んでいた。小鳥のさえずりが聞こえ、ステンドグラスの窓から煌びやかな日差しが差し込んでいる。
「今日もご加護がありますことを……」
神父は手を重ね合わせて目をつむりステンドグラスに描かれた神に祈った。
ここは、『
論信教会の
人々の救いであるライトワーカーとして生きる
キャビネットに置かれている大きな壺は、500万を献金して手に入れたものだった。青華緑彩花車模様で描かれた花瓶だ。宗教の寄付にしては原価価格だったことに気づいても疑問さえ沸かなかった。のめり込んでいて、信じすぎている。
姫田 倫華は、周りの同じ信仰者で脱会しようと試みた人は、有名な人だと芸能界引退を迫られ、高額献金をしなければ脱会できなかったとされてきた。仕事を退職せざるを得ないとする状況を聞いて絶対に辞めないぞと意志を貫いていた。
今日も論信教会の団体で作られた動画のDVDをこすれるくらいに何度も見ていた。人々を洗脳の渦に巻き込む内容だ。動画で出演している宗教の教主である
姫田 倫華は動画に夢中になっていると、予約のお客様が来店した。カラカラとドアベルが鳴った。慌てて、リモコンのスイッチを入れてテレビの電源を切った。
「いらっしゃいませ。ご予約の
姫田 倫華は、予約本の時間と名前を確認して、固まった表情を柔らかくして笑みを浮かべた。
「そうです……そうなんです! 姫田さん!! 聞いてください!」
常連のお客様である東峰 未来はしがみつくように姫田 倫華の左腕をつかんだ。涙が出そうなくらいに興奮している。迷える子羊がお客様ということは分かっていた姫田 倫華だが、この時ばかりは尋常な様子ではないことに驚きを隠せずにいた。
「ど、どうしたんですか? 大丈夫です? まぁ、落ち着いて。今、ハーブティーを淹れます。そちらにおかけになって。お話はしっかりお聞きしますから」
そっと両肩をおさえながら、ふかふかの白いソファへと誘導する。すぐには落ち着かず、手の震えが止まらずにいた。
壁掛け時計の短針が11に、長針が12を差していた。癒しのオルゴールが鳴り始めて、幾分呼吸が整った。キッチンに移動した姫田 倫華の心臓は高鳴りはじめている。急須の持つ手が震えていた。
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