セックスしないと出られない部屋に俺だけしかいない件について
国見 紀行
それは、ある日の帰り道
気が付くと、豪奢な部屋のベッドで俺は横たわっていた。
「ここは?」
『タニグチ・リョウジ。お前は選ばれた』
「ひょ?? だ、誰ですか!?」
『我々は高次元の存在。人の交尾に興味がある。示して見せよ』
え、これっていわゆる「セックスしないと出れない部屋」ってやつか!?
俺はちょっとワクワクして周りを見る。
「……あの、高次元の存在さん?」
『なんだ』
「誰も、いないようなんですが」
この部屋、俺以外に誰もいない。セックスするなら女性が必要だろう?
『うむ。だからそこに置いてあるだろう』
「あの、これダッチワ」
『多くの男性はそれを使って交尾をしていると情報を得ている』
「その情報は間違ってるけどあってる」
『どっちだ』
「そ、そもそもセックスは生身どうして行うから交尾だろう! 人形相手はせいぜい自主練にしかならないっての!」
『なるほど、生身の人間だな。ちょっと待て』
お、この流れは女性を連れてきてくれるのかな?
そうやって待つこと数分。
「……よお、田中」
「あれ、谷口じゃん。ねえここどこ?」
『これでいいだろう。さあ始めろ』
「始めろ、じゃあねえんだよ! 男同士でできるわけないだろ!」
『我々の情報網によると』
「待て! その偏った情報ソースで判断するな! 俺は女とセックスがしたいんだ!」
『分かった』
よし、これで……
「あ」
「なんだよ田中」
田中は突然自分の股間をまさぐり始めた。
「お、おいおい何やってんだよ」
「……なくなった」
「高次元!!! お前ふざけんな!!!!!」
『望みの物はすべて与えた。さあ始めろ』
「男としての知り合いが目の前で女になったからってホイホイ勃つわけねぇだろうが!!!」
「な、なあ谷口」
「お前も言ってやれ! 成り行きで女にさせられて迷惑してるってよ!」
しかし田中は顔を赤らめつつ、俺の服の裾をつまんで離さない。
「……田中?」
「こ、ここよく見たらラブホじゃん?」
「あ、ああ。そうだな」
「私、ラブホ入ったことないんだ」
「お前一人称『俺』だったよな?」
「男の人と入ったことなくて」
「俺も男と入ったことはねーよ! なに性別に引っ張られてるんだよ!」
アーーーーッ!!
『素晴らしい知見を得た。お前たちを元の場所に戻してやる』
「……帰ってきたな」
「うん」
「ここどこだ?」
「うちの近所の、公園のあたりかしら」
「なあ、田中」
「なに?」
「結婚、するか?」
「す、末永くよろしくお願いします」
HAPPY END!
セックスしないと出られない部屋に俺だけしかいない件について 国見 紀行 @nori_kunimi
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