29歳男性K.Sさん「お金のことばっかり考えてしまう」

【お悩み】

SNSで見て応募しました。


それにしても、カクヨムで人生相談って珍しいですね。


私の悩みは、金のことが頭から離れないことです。


まじでリアルでもSNSでも、みんな金の話ばっかりで嫌になります。


そんなにブランド品がえらい?


時計がえらい?


決して自分も貧乏じゃないはずなのに、このまま死ぬまで金のこと考えて生きてくと思うとしんどいです。




【お答え】

DMありがとうございます。


私自身、カクヨムはよく見ているのですが、人生相談のようなコンテンツはありそうであまり見ないので、チャレンジしてみました。


それはさておき。


いきなり、かつ自分で言うのもなんですが、私は決して、貧しい出自ではないと自負しています。


私の実家は、神奈川県の、所謂県央と呼ばれるようなエリアにあります。


大学生の頃は、実家から大学まで片道1時間、車で通学をしていました。


100年近い歴史の中で何度かリフォームはしたものの、外観や庭先などに残る日本家屋のテイストは、小さい頃から気に入っているポイントです。


そういえば庭先には、古い蔵が今でもあり、第二次大戦中は避難場所として近隣の方を匿っていた、みたいな話を、亡くなった祖父が話していたのを覚えています。


小さい頃、悪さをして両親に怒られた際には、反省のために蔵に泣きながら閉じ込められたことも。


もちろん5分10分くらいですが。


祖父母が荼毘に付し、私が20歳になる頃、両親は「かねてからの夢だった」と、北陸のリゾート地に終いの住処を建て、子供より早く実家を出ていきました。


つまり、私は現在、実家で一人暮らしをしています。


ここ10年くらいは来客も一切なかったため、広い実家はいつもがらんとしており、猫の一匹でも買おうかなと思ったり、思わなかったり。



ここまでの文章を読んで「ああ、こいつは裕福な出自なんだな」と低評価をつけたくなった方もいるかと思います。


でも、そんな私でも、自分の人生が見劣りしてしまうことは無数にあります。



SNSを開けば、色々な「自慢」で溢れかえる世の中です。


どこかの社長が、嘘みたいな高級車を何台も乗り回していたり。


大学時代の友人が、大型連休でもないのに、リゾート地で遊んでいたり。


寿司を食べているはずなのに、何故かピントが腕時計に合っている写真があったり。


知らないインフルエンサーが、知らないブランドを着て、知らないモデルを侍らしていたり。


加工をしすぎてエイリアンみたいになっている女性が、大量のブランドのショッパーバッグに囲まれていたり。


誰々が配信サイトの投げ銭で何百万も稼いだとか、誰々が株で大儲けしただとか。


「人は人」と頭では分かっていても、どうしてもそう思い切れないのが、この時代です。



そんな時はスマホの電源を、と言いたいところですが、こんなおそらくK.Sさんはある種のスマホ中毒者なのではないでしょうか。


かく言う私も絶賛スマホ中毒者なので、気持ちはよく分かります。


スマホ中毒者ほど、隣の芝生を見る機会が多いので、どうしてもその青さに当てられてしまうことも多いのです。



そんな時は、ぜひ自分の人生の豊かな面だけを誇ってみてください。


私は決して貧しくはない家庭に育ちましたが、それでも裕福な家庭ではなかったと思います。


第二の人生を歩んだ両親を、最初は「そんな金を持ってるなら、俺にくれよ」とすら思っていたこともありました。


ですが今思うと、昔からこの家を守り続けて、大した贅沢もせずに定年近くまでコツコツと貯めたお金で、両親はようやく夢を叶えたのです。


通学で使っていた車も、祖父母からのプレゼントでした。


何故かミニバンをプレゼントされました。


罰当たりな話ですが、プレゼントされた時は内心、「もっとかっこいい外車とか乗りたかった」とすら思っていたこともありました。


ですが、このミニバンは、初孫のために年金となけなしの老後貯金を切り崩した、愛の形だったのです。


そもそも、ミニバンだったのも、もしかしたら家族みんなでドライブができるように、という思いもあったのでしょうか。


お金以上の価値に気がついてから、もう一度「ありがとう」と伝えたかったのですが、あの車が祖父母からの最期のプレゼントになりました。


でも、だからこそ、気持ちの部分で「裕福な人生」を歩めてきたと思っています。



健康に育ててくれたことにも。


大学まで通わせてくれたことにも。


初孫を想って車を買ってくれたことにも。



今も決して裕福な生活をしているわけではありません。


それでも、有難いことに仕事はいただけています。


疎遠になった人も多くいますが、それでも大学を卒業しても尚、仲良くしてくれている友達がいます。


ひょんなことから、幼少期から自分が好きだった実家に、今でも住み続けられています。


両親とは離れてしまったけど、それでも年に数回は両親の元に会いにいき、お互いの無事を祝い合っています。


愛する人たちと一緒に、美味しいご飯を一緒に食べて。


たまに一緒に朝を迎えて。


朝起きたら、仕事があって。


今ある幸せを数えたら、自分の人生がとっくに上出来だったことに気が付くけます。



K.Sさんも、自分の人生を卑下するのではなく、誇ってみてください。


それは稼いだお金の額とか、持っているブランド品の数だとか、そういった事ではないですよ。


そうしたら、余計なことを考えなくなるはずです。


隣の芝生は青いし広いしキラキラしているんです。


でも、自分の芝生にも、捨てたものではない場所が必ずあります。


その部分を忘れずに、大事に育ててみてください。



明日も、祖父母からもらった10年選手のオンボロ車で、お出かけします。


ありがとうございました。

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