章1 始まりへ
走って、走って息が上がる。
鬱蒼とした森を、汗と涙を流しながら走る。
どうして私がこんな目に
後ろから矢が飛んでくる。
「ヒッ…!」
もうヤダ
そう思うけど、エルさんには逃げてと言われているし
でも理由はまだ聞けてないし…
何か間違ったのか、今まで何か悪いことしたか、考えながら走った。
もう心臓が弾けそうなほど。
突然視界が開けた。と思えば前は崖で行き止まりだ。
下には水面に映る月が見える。
後ろで数人の足音が近づいてくる。
ああ、嘘でしょ
もし私が魔法を使えるのであれば飛んで逃げれるのに…
そう考えてもしょうがない。
幸いそこまで高い崖ではない。
思ったより泉が浅かったらどうしよう、
きっと濡れたら凍えてしまうだろうな
。
でも、捕まって何されるか分からないぐらいなら!
バシャン!
意を決して飛び込み音が響く。
頭まで沈む
思ったより冷たくて
思ってたより深くて
思ったより泳げなくてもがく。
「おい!大丈夫か?!」
何か聞こえたと思えば、目の前に木の棒が差し出される。
なんとかそれを掴んで岸から上がり息を整えながらお礼を述べる。
その人は銀色の髪をオールバックにした小柄な男子だ。
…誰なんだろこの人。
「拭くものは持ってないな…とりあえずこれでも使うか?」
そう言って彼が着ていたダッフルコートを差し出してきた。
「すみません…でも濡れてしまいますよ」
「そんなこと言ってる場合か?」
そう怒られて謝りながらコードを頂くことに
すると後ろから複数人の足音が聞こえてきた。
そうだ、逃げている最中だったんだ!
慌てて立ち上がり逃げようと駆け出す。
が、足がもつれてすぐにコケてしまった…
「おいおいおい!なんで逃げるんだよ!てか大丈夫かよグラズ!」
色々恥ずかしい…
って、え?
振り向くと前髪に白いメッシュが入ってるのが目立つ緑髪の人…
声は彼に似ていたが、雰囲気が全く違う。
少なくてもさっきまでの怖い感じは無い。
「どういう…」
唖然としてると彼は魔法で火を起こす。
「てかお前らこんなところで何してるんだ」
「夜行訓練に付き合ってただけだ。お前もなにしてるんだよこんなところで…」
ほかにも来た男子たちが各々話しているが私はまだ混乱している。
…さっきまで追いかけてきた人達は?
唯ならない違和感。もやもやがつのる。
「お前はもう帰れ。濡れてたら風引くだろ」
緑髪の人が突然口を開く。
帰れと言われても…
「俺らも帰るところだから途中まで行くか?」
銀髪の人も…
帰っていいの?
ならなんでさっきまで逃げてて…
逃げてって言われて…
思考を巡らせても結局分からない。
どうするべきかなのか…
とりあえず促されるまま立ち上がろうとした瞬間
目の前が回る。
あ、いつものだ。
頭に血がいかない、目眩だ。
あれ?でもおかしい
気が遠のく
走りすぎたせいなのか
それともなんなのか
さっきの人達が肩を揺さぶるのが頭に響く
そのまま目の前が暗くなる
辛うじて細月の光りがぼんやりと見えた
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