君は僕と会わない方がよかったのかな

崩壊

第13話

━━2019年4月。


年も明けて、悠理達は高校三年生になった。


大学受験などの進路を確定する時期でもあった。


(綾乃ちゃんからも自立しないと…)

と考えていた悠理は、大阪の大学を受験しようと思っていた。


━━正直、大阪の大学で学びたい学科がある訳ではなかった。


きっかけは《聖来》だった。


今まで《悲しくなるから》と避けてきた、《大阪》や《たこ焼き》にあえて触れる事で、《聖来の死》を受け止めようとしていたのだ。


紗耶やさくら達共、色々と話せるようになって来た。


アルバイトも慣れて来た。


受験の関係で、アルバイトは夏休みが終わるくらいまで続ける事にした。


去年の6月に遥香と出会って10ヶ月…。


悠理は、随分と前向きになれた。


遥香には感謝してもしきれないくらいだった。


━━しかし、遥香とは去年のクリスマスにお台場で遊んで以来、会えていなかった。


悠理もアルバイトが忙しく、遥香の方も色々と用事があるようで、電話やメールも殆ど出来ていない。



━━2019年5月のある日…。

丁度、ゴールデンウィークが明けた頃…。


久し振りに、悠理と遥香は会った。


いつもの公園のいつものブランコで、二人は話していた。


ゴールデンウィーク中、悠理はアルバイトでミスを多発してしまっていた。


━━悠理は、どちらかといえば運動は得意な方ではなく、機敏な動きは苦手だった。


その為、お店が混んで忙しくなると焦ってしまい、ミスをしやすくなるのだ。


俗に言う《テンパって》しまうのだ。


「お店、忙しかった?」

と、遥香が訊いた。


「うん、めちゃくちゃ混んでた。」

と、悠理は苦笑した。


「大変そうだね…。」

と、遥香は言った。


「ミスばっかりしてたよ…。」

と、悠理は言った。


「大丈夫?」

心配そうに遥香が訊く。


「結構、精神的に参ってるよ…。」

悠理は溜め息をついて、

「もう、死にたい…。」

と言った。


━━別に本当に死にたい訳ではない。

多くの人が疲れた時や嫌な事があった時に、《死にたい》と言う、冗談程度の言葉である。


「……でよ…。」

と、遥香は呟くように言った。


あまりも小さく呟いたので、前半が聴き取れなかった。


「ん?」

悠理は遥香を見た。


「簡単に…言わないでよ…。」

と、遥香の声は震えていた。


「え?」

悠理には、意味が分からなかった。


「簡単に、死にたいとか言わないでよ!」

遥香は怒鳴るように言った。


「!?」

悠理は、突然の遥香の大声に驚きを隠せなかった。


「世の中には、生きたくても生きれられない人もいるんだよ!」

遥香の頬を涙が伝った。


「ご、ごめん…。」

悠理は頭を下げてから、

「別に…そんなつもりじゃ…。」

と言った。


「じゃあ、どんなつもり?」

遥香は、悠理をキッと睨むと、

「どんなつもりで軽々しく口に出来るの?」

と言った。


「ごめんなさい…。」

悠理は、謝る事しか出来なかった。


「生きたくても生きれられない人も沢山いるのに、簡単に死にたいとか口にしないでよ!」

遥香は泣き叫ぶように言った。


「ご、ごめんなさい…。」

悠理は、ひたすら謝った。


「…嫌い…。」

遥香は声を震わせながら、

「悠理なんか、大っ嫌い!!」

と叫んだ。


「え?」

悠理は遥香を見つめた。


そして遥香は、走り去ってしまった…。


━━取り残された悠理は、唖然としていた。


「ど、どうしよう…。」

悠理は困った顔をして、

「遥香を怒らせちゃった…。」

と呟いた。


その日を最後に、遥香は電話も出なくなり、メールの返信もなくなった…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る