反旗
@Sirataki_police
英雄の遺産と火種
そのころ、人々はまだ魔法という力を持たず、ただ剣と槍だけを頼りに戦っていた。
されど、大地には魔物が跋扈し、終わりなき戦乱が世を覆っていた。
血の雨が降り、大地は戦の叫びに満ち、夜には焔が空を焦がしたという。
この混沌の時代、人々は己の力のみを信じ、魔物との戦いに明け暮れていた。
しかし、七人の英雄が現れ、魔物を退けた。
鋼鉄の城壁と謳われ、不落の守りを誇った アーマーナイト【ロアロック】
漆黒の刃を振るい、闇よりもなお深い剣技を操った 暗黒剣士【ゴルベス】
千里を見通し、一矢で戦況を覆す 天穿(あまうが)つ狩人【ガビット】
酒に酔えども剣が鈍ることはなく、乱れ舞う刃は鬼神のごとし 酒乱剣豪【ヤーポコ】
風をも裂く鋭槍を振るい、戦場を駆け抜けた 疾風の闘槍【サイロイ】
己の拳をもって鋼を砕き、猛獣をも素手で屠る 剛腕無双【グラス】
そして、人が魔を超える力を得る礎を築いた 始祖の魔道士【ボド】
彼らは魔物を退けしのち、人々を守る砦を築いた。
それこそが、今に続く城塞都市──【クーファ】の始まりである。
しかし、英雄たちの偉業はそれにとどまらなかった。
彼らは自身の力の証として、それぞれが持つ魔力を純粋なる結晶へと昇華させた。
かくして生まれた七つの大いなる魔法の結晶──「七大結晶」。
この結晶のかけらを用いることで、人は誰もが魔法を扱うことができるようになった。
そして、これをさらに深く研究し、新たなる魔法の体系を確立したのが、隣国である今現在魔法都市を冠する【ダーヘン】である。
かくして、人は剣だけでなく、魔法の力をも手にし、長きにわたる魔物との戦に終止符を打ったのであった。
──しかし、英雄たちの遺した平和は、たった数百年で崩れ去った。
十数年前、かつての盟友であった城塞都市クーファと魔法都市ダーヘンは戦火を交えることとなる。
その発端は、両国の間で交わされていた「七大結晶」の管理をめぐる協定の破棄であった。
もともと、七英雄が遺した大結晶は、両国の共同管理のもと、慎重に運用されていた。
しかし、時が経つにつれ、クーファはこれを戦略資源として国家の管理下に置くべきと主張し、
ダーヘンはすべての人々に魔法を解放すべきと訴えた。
そして、あるときダーヘン側の魔法研究機関が、結晶の力を増幅し、大量生産する技術を発表した。
それは「魔法を万人に与える」というダーヘンの理念を実現する発明だったが、クーファはこれを危険視し、技術の封印を求めた。
ダーヘンはこれを拒否し、結晶の一部を独占的に使用し始めたことで、両国の関係は決定的に悪化。
やがて、クーファは「大結晶の正当な管理者は我々である」として、ダーヘンへの武力制裁を開始し、戦争が勃発したのだった。
この戦いはすでに十年以上続き、ダーヘンは兵力の不足に陥り、ついには魔法学校の生徒すらも前線に送り込まれる状況に追い込まれている……。
──これは、戦火に揺れる魔法都市ダーヘンにある
魔法学校【ローゼガルド】の生徒たちが巻き起こした、ある偶然の物語である。
戦場へと駆り出され、もはや学び舎とは名ばかりとなった学校。
魔法を誇りとしながらも、それを戦うための術としてしか使えなくなった生徒たち。
そんな絶望の中で起こった、ある偶然が──
この世界の運命を大きく変えることになるとは、誰も予想していなかった。
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