第十一話
翌日、加藤は荒池に言われた通り江道舷璽のいる会長室へ向かった。
「くそー……、傷口で遊ぶんじゃなかったぜ…、おかげで直りが遅くなってい痛ぇ……。」
加藤は腹部を押さえながら青ざめた顔でエレベーターに乗っていた。
加藤は最上階の20階に到着し、エレベーターから反対側まで歩いたところに『会長室』と書かれた重厚な扉を見つけた。
「……あ、ここが会長室か。 会ったことねえから緊張すんな……」
加藤は扉を二回叩き扉を開けた。
「しつれーしまーす」
すると奥の机から渋い声が聞こえた。
「よく来たね。」
メタリック会長の江道舷璽だ。江道は白髪のとさかを立て、髭は膝辺りまで伸びている。老体ではあるが巨漢である。
「こ……こんにちは……」
加藤は緊張していた。
「そこの椅子に座んなさい。」
「あ……はい。」
江道は前の対面している黒いソファを指した。江道は腰を上げ、加藤とは反対側のソファに座った。
そして江道は神妙な面持ちで口を開いた。
「……今日君を呼んだのは他でもない、『あの計画』のことだ」
「……そんなにヤベェ話なんすか。」
「ああ。君はテレビのない医務室にいるから知らないだろうから一応説明しておくと、この日本に『新しい国を作ろうとしている集団』がいるらしい。」
加藤は目を見開いた。
「新しい……国……!?」
「そうじゃ。稲島はその建築部門を請け負っておったと自白したそうじゃ。」
「……で、稲島は他に何をしゃべったんすか!」
「それが……、その話をした途端、稲島は…………死んだ。」
江道は表情一つ変えず言った。
対照的に加藤は驚愕した。
「えっ!?」
「尋問をしていた桐谷曰く、あまりにも一瞬だったらしい。 裏の集団の話をするといきなり首が取れたらしい」
加藤は黙り込んでしまった。自分がしょっ引いたにしろ、今日的だった稲島がが一瞬で、しかも敵地の中心で死んだからだ。
「……まあ、おおよそは犯人は予想つくが、足どりもつかめておらん。この先君も危ないだろうということで今日ここに呼んだんだ」
「……それってつまり……」
「『君の命が危ない』ということだ。」
加藤は俯いた。そして震えた。
「……怖いのはわかる。儂も命を狙われる身だからよーくわかる……」
「違うっすよ、江道さん。」
江道は意外な返答に不思議に思った。
「……ほほう、それは一体?」
加藤は顔を上げた。その顔は笑っていた。
「…キメェかもしんないすけど、俺今楽しいんす。
タマ狙われて、本格的にヒーローになれたみたいで!」
「……なるほど、キモイな。」
江道は間をおいてボソッと言った。加藤はその言葉に少しショックを覚えたが、
「……昔の儂とそっくりだ。」
江道は笑って言った。加藤もそれに呼応するようにまた笑顔になった。
「やっぱり……、悪に嫌われてから英雄っすよ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます