姉妹のようなふたり
今日も俺は鳩だ。
そして今、公園の木の枝にとまっている。なぜかって? それは百合カップルを見守るためだ。
のんびりとした午後の日差しの中、ひと組の女の子たちがベンチに座っていた。
ひとりは、小柄でふわふわとした雰囲気の子。髪も肩くらいで軽くカールしていて、服も可愛らしい。
もうひとりは、少し背が高く、大人っぽい雰囲気の子。長めの髪を後ろでまとめ、落ち着いた服装をしている。
「ほら、じっとして」
「えへへ、ごめんね〜」
大人っぽい雰囲気の子が、小柄な子の髪をそっと整えている。
「いつも寝癖ついてるんだから……ちゃんと直してから来なさいよ」
「お姉ちゃんみた〜い」
小柄な子はくすくす笑いながら、大人っぽい子に甘えるように寄りかかる。
——これは、尊い。
俺は静かに羽をたたみ、息をのんだ。
「髪、ちゃんととかしてる?」
「うーん、一応?」
「ダメね……ほら、ブラシ貸して」
大人っぽい子は、持っていた小さなブラシを取り出し、器用に小柄な子の髪を整えていく。
「うわ〜、ほんとにお姉ちゃんみたい!」
「別に、姉じゃないけどね」
そう言いつつ、どこか嬉しそうだ。
小柄な子は、目を閉じながら気持ちよさそうに身を任せている。
「こうしてもらうの、なんだか落ち着く〜」
「まったく、世話が焼けるんだから」
大人っぽい子は、呆れたようにため息をつく。でも、その表情はどこか優しい。
「……でも、まあ、嫌じゃないけど」
「ほんと?」
小柄な子がぱっと顔を上げる。
「うん、ほんと」
大人っぽい子は照れくさそうに目をそらしながら、そっと彼女の髪を撫でた。
——ああ、これは。
俺はそっと翼をたたむ。
今日もまた、ひとつの百合を見守ることができた。
公園の鳩としての使命は、まだまだ続く——。
(つづく)
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