6)幼少期に読んだ漫画 ①

【幼稚園から小学校のお話】


 物心ついて最も古い漫画の記憶をたどってみると、どうやら僕は小学校就学前には既に漫画を読んでいた。

 もちろん絵本も児童書も沢山読んだけれど、この小説においては「僕がどんな漫画を読んで育ったのか?」と言うのがとても重要なところだ。


 何故なら僕が自分をゲイだと自覚した時のハードルを下げて、そしてそれが決して特異ではないと、僕の心をふんわりとフォローしてくれたのが数々の少女漫画だったと思えるからだ。


 この私小説の序文にも書いた。

「自分がゲイだと深刻に考えたり、辛く思い悩んだ記憶がほとんどない」

──と。


 また初恋についても以下の通り書いている。

「同性を愛することの異常性や罪悪感はほとんど感じずにいた」

──と。


 そんな風に同性愛をポジティブに受け止められたのは、当時既に少女漫画界でひとつのジャンルを為していた「少年愛物」の好影響に他ならない。

 当時はまだボーイズラブとの名称は無かったけれど、耽美派とかヤオイとか言われていた。


 僕が実際、何歳の時から字を読んでいたのかは定かでない。この記事を書くに当たって父親に聞いてみた。

「父さん、俺って何歳の時から字、読めてた?」

 父親は(何をいまさら?)って顔をして「そんなこと俺が知るか。そう言う事はみんな母さんにまかせていたからな」って、確かに聞いた相手が間違いだった。

 この父親は、子供が高熱を出していても気付かないような人だっけ。


 僕は──これはどうやら、いくら自分史とは言えある程度の取材は必要だぞと思い立ち、すぐさま波奈はなに問い合わせた。



※──────────※



──電話での会話。

「ねえ波奈、俺って何歳の時から字、読めてた?」

 すかさず波奈が、

「あのね、それが何歳だったかは覚えていないけど、理久りくに読み書きを教えたのは私なのよ。だから、もしかしたら理久の方が私より読み書きは早かったかも知れない、感謝してよね」

 と、これまた自動的に僕の借りがひとつ増える結果となった。いくつになっても僕は波奈にはかなわない。

 そして、もはや自分が何歳で字を読んでいたかは迷宮入りだ。


「ねえ波奈、小学校低学年の頃、どんな漫画を読んでいた?」

 つまりその頃、僕は幼稚園児だった訳だ。そしてその答えは意外なものだった。


「ああ、その頃は週マと週フレだったよね」

「え?波奈、別マと別コミじゃなかった?」

 僕の記憶では、波奈はずっと別マと別コミの愛読者だった筈なのに?


「それは私もお小遣いがもらえて好きなものが買えるようになってからの話よ。それまで漫画と言えば、ず~っと順子姉さんからのお譲りだったから」

「ああ、そうか!漫画の流れにも時代と人脈があっんだね」



《解説》

週マ=週刊マーガレット

週フレ=週刊少女フレンド

別マ=別冊マーガレット

別コミ=別冊少女コミック





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