第3話

「ただの貧血です。安心してください。」

スー、スーとベットの上で眠る隆一の直ぐ側で、白衣の眼鏡の女性。

彼女の名前は森崎麗華。

神の手とも言われる世界トップクラス腕の立つ医者で、ここではラングレー社の運営するクリニックの医院長でもある。

「まさか、お嬢様直々に半泣きになりながら隆一がぁ〜なんて言いながらここに来たときはびっくりしましたよ。あのラングレー社の社長が執事なんかを背負ってくるんですもん。」

「あ、あなた…うるさいわよ…」

ちなみに麗華は私の2つ上の18歳。

現在、大学生なのだけども趣味が勉強で一般家庭の身ながらも、お小遣いを全て、参考書や医学の本についでいたらしい

「にしても、やはりお嬢様も所詮は16歳ですね。」

無表情で麗華はカルテを書きながら言った。

「な、何が言いたいのよ…」

「純粋ってことです。好きな男子が倒れたら心配するほどに」

「なななななななななな!!!!何を言ってるのよ!!!!!べ、別に好きなんかじゃないわよ!!!!」

「ツンデレですか…ツンデレは結局責められずに負けヒロインになるのが見えます。」

「ま、負けヒロイン?」

すると麗華は、「はぁ…」とため息を付いた。

「負けヒロインっていうのは、恋愛などの戦いで負けてしまう女性の事を指すんですよ。結局は想い人と結ばれない人のことです。」

「わ、私が結ばれないというのかしら!!!!?」

私は隆一の眠るベットの隣で大声を出した。

そしてそんな私を見て

「はい。たしかにお嬢様は少しくらいのサービスシーンを作ることくらいはできるかもしれません。」

「さ、サービスシーン???」

「でも、この男の子が喜ぶシーンを完全に作ることは出来ないでしょうね。まだ子供ですので。」

麗華は何か見下すような目で私の事を見ると、まるで勝ったような顔をした。

「……何よ…だ、だったら貴方はどうやってその…男の子を喜ばせるのよ…」

私は恐る恐る聞くと、麗華は今回何度目かの飽き顔を見せる。

「はぁ…良いですか?男の子ってのは感覚が大事なんですよ…」

「というと…?」

「つまりですよ?身体を見せるよりも身体と身体を触れさせるのが良いんです。そうですね…たとえばこんな感じでしょうか…」

麗華はしばらく考えて何か決まったのか、眠っている隆一の口を手で無理やり開ける。

力が抜けているせいか、少しだけ唾液が口内に溜まっている。

「良いですか?こうやるんです。」

麗華はいうと、はしたなく口から舌を出す。

「え…な、何するつもり…?」

そして、どんどんと垂らした舌と口の距離が近くなる。

「こ、これって……お父様たちが毎晩夜にやっていた…」

舌と舌を交えたキス…

愛する人と愛する人だけしかが、やっては行けないキス!!!!!

私は顔を手で押さえて無理やりにでも見えないようにする。

けども、やっぱりやっぱり気になってしまって指と指の間から、2人の様子を見てしまう。

そして麗華から垂れた唾液が隆一に垂れた。

「あ…」




「お、おい…何をしているんだ…」

と、その時、唐突に隆一の目が開いた。

「あ、りゅ、隆一…!!」

「あれ…お、お嬢様!?ここは一体…っていつもの病室ですか…」

「貴方、自分から私の裸姿見ておいて、見た後は派手に気絶するもんだから、本当に情けないわ…」

「これだから負けヒロインなんですよ…」

ボソッと呟いた麗華。私は麗華に圧を掛けながら「何?」と聞く。

麗華は、「いや…なんでもないですよ?」と答えた。

「にしても…隆一くんはちょっと興奮しやすいです。少しは落ち着いた方が良いですよ。この前の夜だって…あ、これは私達の秘密でしたね。失礼しました。」

麗華はいつの間にか自分の胸を隆一の腕に押し付けながら淡々と言う。

って…この前の夜…?

「この前の夜って…どういうことかしら?隆一。」

「え!?い、いや、この前の夜って、いつの話かよく分からないのですが!?ていうか麗華!!!嘘の情報をばら撒くのは辞めろ!!!!この前に他の執事に俺は夜になると獣になるだの言っていたらしいじゃないか!!!!」

「事実です。」

「嘘だ!!!」

「事実です。」

「嘘だ!!!!」

「でもこの前に狼男になる薬を勝手に投与したので。」

「嘘じゃないっ!?」

と、私は何故かその二人の良くわからん会話に付き合わされることになり、結局その日は何があろうとも隆一とは会話を交わさなかった。

まぁ、隆一は一方的に私に言葉をぶつけてはいたんだけど…


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