ラプタ

ななご

プロローグ 

第1話 不思議な人

この世界は、歪んでいる

500年前、宇宙から魔物が飛来してきて5つある大陸の内、3つを侵略された人類は残る2つの大陸への避難を余儀なくされた。

その「厄災」からさらに10年が経過した頃、人類に一筋の希望が見栄えた、そう「魔術」だ。

魔術の力を得た人類は残り2つの大陸を死守することに成功し、魔物との戦いを優位に進め、「4英雄」と呼ばれる大魔術師の力によって魔物に侵略された大陸と人類が住む大陸の物理的分断に成功し、人類は救われた。

そう思われたがその希望もラプタと呼ばれる現象によって容易に打ち壊される。

これがこの世界の歪んだ歴史 私が生きる、苦痛に塗れた世界の記憶



白神怨呪には悩みがある。それは自身が「忌子」と呼ばれ、世界的に差別されている現状だ。


小中学では「忌子だから」と言う浅はかな理由で自身に暴力を振るう同級生は数えきれないほどいるし、教師の反応も良くて無視ひどい時は暴力に加担する教師もいた。自分を庇ってくれる人間なんか誰1人いない、そんな環境だった。

そんな状況が認められるのも私が忌子だから、と自分自身に無理やり納得させ続けてはや9年が経っていた。


そんな環境だったから友達の1人ができるわけでもなく、今日から新たに通うすこし特殊な学園の新品な制服を身に纏いながら、慣れない都会の駅の中で彷徨っていると後ろから若い男性に声をかけられる

「君、道に迷ってるのかい?」

まさか自分に声を掛けるような物好きがいるとは思わず、少し慌てた様子で振り返りつつ

「そうなんです。西口から出たいんですけど‥」

そう言い切ると同時に振り返った怨呪の若い男性‥いや男性たちへの容姿の印象は「チャラそう」だった。

偏見でしかないだがこの手の人間が声を掛ける相手って大体は体目的のナンパと相場が決まっている。しかし、自分がナンパされる日が来るとは思っていなかった。

なぜなら私は忌子だから、世間的に嫌われているのだから。そんな自分にナンパをするこの男性はよっぽどの物好きか、はたまたそういうシチュエーションに背徳感を覚えるタイプなのか、どちらにせよ変態なことには変わりない。

そんな偏見だけで彩られた思考を怨呪がしている内に目の前の男性は話始まる

「西口か〜なら結構遠いね」

本当かはわからないが目の前の男性はそう言う

「そうなんですか?」

そう探りを入れつつ、この後の反応を見てこの人を信じるか、信じないかを判断しようと怨呪は決める

「だってここから1番近い出口は北口だもの」

「そうなんですね、ではどこに行けば西口ですか?」

そう聞くと男性はにっこりと笑いながらこちらに歩み寄り

「あ〜心配しなくても僕たちが連れて行ってあげるよ」

はい、黒確定。この世界で私にする人間がいるわけないからね。期待した私がバカだった。

「場所だけ教えていただければ1人で行けるので大丈夫です」

怨呪がそう言うと、その男は豹変したように荒々しく私の腕を掴み、怒鳴り出す。

掴んだ際、怨呪から苦痛の声が漏れるがそんな事は関係ない。

「忌子のくせに調子に乗るな!黙って俺たちに着いてこれば良いんだよ!」

せめてもっと下心を隠そうとして欲しい。

おそらく今まで誰にも優しくされなかった私だからこそ、少し優しくすればすぐに堕ちると思ったのだろう。けど、そんな人間だって沢山いたし、過去にそれで1度本気で死にかける事態に陥った経験があるから、今の私はその程度で堕ちるほどちょろくない。

「離してください、警察を呼びますよ!」

ナンパの対処法鉄板の言葉だ。運がいい時はこれで引いてくれるが‥

「忌子を助ける人が居ると思うか?」

無理だった。無理やり引き剥がすのも出来なくはないが、何が起こるか分からないから正直怖い。

そうやって怨呪が悩んでいると背後から声が響く


「その人、嫌がっているよね?やめたら?」


振り返るとそこには黒髪の真っ赤な眼をした私と同じぐらいの少年が立っていた。

予想外のことに、私とナンパ男が固まっている間に少年は私とナンパ男の前に割り込む形で立ち、私に話しかけてくる。

「大丈夫?あとは任せて」

そう言い、"掴まれていた私の腕から男の腕を抵抗されることなく、自然に外した。"

「えっ?なんで‥?ちゃんと掴んでいたはずなのに‥」

ナンパ男が呟く。最初は何が起きたかわからないといった様子だったが、その表情もすぐに怒りに変わる。

「部外者が邪魔してんじゃねーよ!」

この男の性格からするとすぐに手を出すものだと思っていたが、意外にも言葉で返している。

「部外者?そんなの関係ないと思うけど」

「小さい頃に習わなかったか?人の問題に口出ししてはいけないって」

「さあ?習ったような気もするし習ってもない気もするね、でも"それ"今の君に言う権利ある?」

「有る。今は俺とそいつが離してるんだ。分かったらさっさとどっか行け」

「いいや、ないね。」

「‥?なんでそう思う」

「簡単な話だよ、"人の問題に口出ししない"これはマナーの話だ。法律に定められた"ルール"ではない、つまり暗黙の了解というわけだ。皆が当然のように守っているだけの話」

「きっと君は、そのマナーを守れと言いたいんだろう?でも君にはその言葉を言う資格は無い、なぜなら君は"人に迷惑をかけてはならない"というマナーを破っているからだ。人にマナーを守れと言うのならまずは己自身がマナーを守らないといけないのでは?」

「なるほど、ガキンチョの言うことももっともだ、なら言い方を変えよう」

「痛い目に合いたくなければ帰れ」

絵に描いたような脅し文句だ、と言うよりこの男、レスバに弱くないか?いや、煽り耐性がないのか?そんなくだらないことを怨呪が考えていると少年がいきなり笑い出す。

「痛い目に合いたくなければ帰れ?それはこっちのセリフだよ、あんた達が敵うような相手じゃない‥」

そう言い終える前に男の拳が少年に向かって伸びる。怨呪が危ない!と叫ぼうとした瞬間、男の拳が空中で停止する。

「なっ!?お前まさか!」

驚愕する男に少年は笑顔で答える

「まさか一般人だと思った?俺は"魔術師"だよ、それも上級とされる"9星"‥のね」

9星、それは1星から12星まである魔術師の階級の中で上から4番目に高い階級だ。大陸中から魔術師が集められるこの巨大都市(アルネキア)にもわずか1000人しかいないと言われている上級魔術師、まさか目の前の少年がそれだと言うのか?でも、それなら納得だ。私を助けようと行動が出来たのも、この圧倒的実力があるなら成人男性3人を無力化するなんて赤子の手を捻るより簡単なのだから。いや、それよりも気にすることがある。なぜこの少年は私を助けてくれたのか、それがわからない。

「どうする?このまま戦うかい?先に攻撃したのは君だ、過程はどうあれそれが結果。今この条件なら上級魔術師である俺には魔術の行使が許可される。この状況、君に勝ち目はないと思うけど?」

「ふざけんな!9星なんて化け物とまともに戦えるかよ!」

「なら逃げたらいいだろう?別に手荒な手段がしたいわけではないからね」

そう少年が言うと同時、男とその取り巻きはすぐに走って逃げていく。結局、取り巻きは1言も喋らなかったな‥まあどっちでもいいか、それより少年にお礼を言わないと!

そう思った怨呪だったが辺りを見渡してもどこにもさっきの少年の姿はなかった



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初めての人は初めまして 作者です

ここだけ見れば怨呪ちゃんが主人公ですがそんなことないです。なのでタグ詐欺ではないです。

一応あとがきには線を引いてるけど私はスマホで打ってるのでもしかしたらpcだと変なことになってるかもです、ご了承ください

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