第6話:犯罪者予備軍

 ハイズ村の復興祈願から4日目の夜、俺はアンと寝ることをとっくのとうに受け入れていた。


離れないので諦めたというのもあるが、なにより俺もアンと一緒にいると安心する。


俺が寝坊しそうになると起こしてくれたり、食事も一緒に楽しくたべたり、一緒に森を走り回ったり……

もう俺はアンを生活の一部として認めてしまったんだな〜。


アンはこの生活について、どう思ってるんだろう?





 もう5日目の朝か。

そういえば4日目の朝に魔法の階級や種類を勉強したな。復習がてらもう一度読み込もう。


まず魔力の階級は


・Top.1神聖魔法 光  

・Top.2特急魔法 闇 雷 

・Top.3上級魔法 水 氷 火 風 土 

・Top.4中級魔法 水 氷 火 風 土

・Top.5初級魔法 水 火 風 土 ////


でわけられている。神聖魔術が最も攻撃性が強く、そのかわり魔力消費がはげしい。

しかし、初級魔法は魔法の基礎で最も攻撃性がないと言われているが、魔力消費はあまり必要ない。


なので、ほとんどの上級魔道士以上は、中間の上級魔法をよくつかうらしい。村長も上級魔法は知っておいて損はないとおもうよ!とか言ってたし、休憩時間に上級魔法の特訓するか!


じゃあ、今できることを……ん?初級魔法の属性についてなにか……


霞んでて見えないな。擦ってみようかな……


ん?なんだこれ?初級魔法の属性紹介にまったく異なる……転移属性? なんてものがある。なんだ?

転移属性って...もしやこれってワープができるのか!?


よし、さっそくテントを出て実験だ。


 今日はアルドさんに事情を説明して復興作業を不参加として認めてもらえた。


俺は辺りをキョロキョロ見渡した。

.....でも、転移属性についての記述なんて書いてないしな〜。まあ、やってみるか。


「ハイズ村に転移することを考えて...よし!転移!」


しかしなにも起こらなかった。間違えたのかな?もっと情景を思い浮かべないといけないとか...


もう一度!転移!


その瞬間、俺の心臓は爆発寸前になるまで膨らんだ。俺は倒れ込み、血を吐いてしまった。

これ以上、転移魔法を使うのはやめたほうがいいな……

今日はテントのなかで休むことにしよう。





 しばらく休んでいると、アンがテントの中に入ってきた。

「復興作業をサボって何をしていたのですか?」と、からかうように聞いてきた。


「すこし気になる魔術があってね、それを試していたのさ。心臓が吹っ飛ぶところだったけど...」


アンはなにかを察したのか、俺の手を握る。


「蓮! 危険なことはしないでね。絶対にだよ! 約束できる? 」

「うん。わかった。じゃあ、小指を出して」


「こう?」

「そうそう、でそのまま小指と小指を絡める」


「キャ!」アンの頬が赤くなった。

「俺の故郷では指きりげんまんっていうおまじないがあるんだよ」

俺達は指きりげんまんをして、約束を守るとお互いに誓った。





 7日目の昼に無事、ハイズ村の復興は完了した。アルドさんが木箱の上に立つ。


「みんなのおかけで無事はハイズ村の復興は成功した。今日は宴だー」アルドさんの言葉に、村の人の歓喜が聞こえる。アンは俺の手を握ってきた。「まだ、行っちゃいや!」


俺はアンの頭をポンポンしながら「今日は泊まるよ」と言ってあげたのだが、アンはなぜか頬を膨らませていた。





夜には宴があった。アルドさんがカバンから酒を何十本も大量に出した。

「蓮さんや、こっちにきなはれ〜」


「アルドさん!? もう、酔ってるんですか……」と俺はため息をつき、「俺も付き合いますよ」と宴の輪の中にはいろうとした。

しかし、実は俺、まだ酒を飲んだことがない。今、異世界に来て2から3ヶ月たった。だけど、まだ16歳なことには変わりない。


どうしよう……アルドさんが俺の肩に腕を回してきた。

「蓮はんも遠慮へふ飲んへくださいよ〜、俺達ァ蓮さんに救われたんでふから〜」


……俺は決意し、酒を手に取り、ぐびっと飲んだ。そして吹いた。


「すみません、おれにはまだ早かったみたいです」

村の住人達は、もうそれはそれは大爆笑。


アルドさんは俺にお酒を飲んで、慣れてほしかったらしい……アルドさんも笑ってるけど。


アルドさんは真剣な顔になった。「明日の朝、ここを出発か? 」

「ええ、そうです」

「じゃあせめて、見送らせてくれ」


俺はアルドさんの温かい気持ちに心を打たれた。


村の住人達全員、朝早くから俺たちを見送る準備をしてくれた。


アルドさんが口を開く「村を救っていただき、本当にありがとうございました。いつでも貴方様方を歓迎していますので、ぜひ村へいらしてください」


村の者は元気よく手を振ってくれたのだが……


「なぜアンはついてくる?」

アルドさんがハッとした顔で、俺達に駆け寄ってきた。


「アン! お前がついていくと蓮殿が困ってしまう」

「だって、蓮がいなくなったら寂しいんだもん」


俺はアンの頭に手をおいた。

「アン! ここから先は危険な場所が多いんだよ。君の命の保証はできない」


「いいの! それでも私は蓮についていく!」


その輝かしい目に俺はつい、許可を出さざるを得なかった。

「では、改めてありがとうございました」


蓮とアンとゴンたちは、新たな旅路へと足を踏み入れた。アンが同行することになったことで、旅は賑やかになった。


「アン、あまり遠くに行かないで。迷子になっちゃうよ」

俺が声をかけると、アンは「はーい」と元気よく返事をして戻ってきた。

アンは初めて見るもの全てに興味を示すもんだから、俺が見張っていないと迷子になってしまいそうな感じがする。





しばらく歩いていると、街が見えた。

「中間地点スペード街につきましたよ。少し休憩しますか? 蓮様……」


「俺もクタクタだよ、あと魔法の修行をしたいからさ、しばらくここに泊まろう」


リンタが覚悟を決めた表情をする。

「どうした?リンタ」


「我々魔物と呼ばれる者はこの先のスペード街から反感をかっているのです。


ハート街などの中立都市などはあるのですが、このような王都が支配している街などは、魔物に対して恨みを持っている者が多くおられます。


我々と行動を共にすると貴方様方も反感を向けられてしまいます。そのようなご無礼は我々したくありませんので、ここまで案内をしてきて言いづらいのですが、我々は貴方様方とここでお別れです。


蓮様と冒険をする事ができ、光栄でした。村に帰ったら村の者に冒険談を伝えるとしましょう。

誠に今までありがとうございました」


俺とアンは手をつなぎ、彼らを案内中に起きた楽しかったことや、困難だったことを思い出しながら、見送った。

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