第5話:ハイズ村の復興
現在は午後10時くらいだろうか。ハイズ村の住民は自分の家が崩壊しているため、村長が仮の施設ということでテントをいくつか用意してくださったらしい。
テントは一世帯に一つであったが、ゴブリンたちはそとで見回りをしてくると言ったため、うちのテントは広くなった。掛け布団なども村長は持ち歩いているのだとか。
アルドさんはマジックバックというのを、愛用していて見た目以上に何倍もはいるため、テントなども持ち歩けると言っていた。
アルドさんが激推するくらいの品であるため、俺もマジックバックとやらに興味が湧いてきた。
この村をでて、次の街についたら買ってみるか。だが、明日から村の復興を手伝うという話になっているため、今日は早く寝ようと思うのだが、「ーーなんで俺のテントに入ってくるのかな? アン」
アンが俺のテントに入ってきた。アンはアルドさんに引き取られているため、アルドさんのテントにいるはずが、なぜか俺と寝たいとわがままを言い離れない。
「アン、お前にかまってやれる時間は少ないぞ。今日は早く寝なきゃいけないから」
俺がそこまで言ってもアンは俺の布団のなかに入ってくる。
「だって、蓮といっしょにいられないと、すっごく寂しいんだもん」
俺はアンの頭をポンポンした。
そして、アンを見つめた。
「あーもう、わかった、わかった。今日だけ一緒にねるか」
アンはうれしそうに抱きついてきた。
無事寝ようとしたのだが、その晩、アルドさんがこっそり俺のテントにお邪魔してきた。
「蓮殿、あなたに渡したいものがあるのです」
「渡したいもの? 」
俺は何を渡されるのかまったく検討がつかなかった。
するとアルドさんは洒落てる紙袋の中から分厚い本を出した。
「はい。これ、魔導書だよ。きみは初級魔法を応用してグラリスを退散させた。
でもこの先、グラリスよりも強い者にであったら、初級魔法なんて効かなくなる。だから伸びしろのある君に、この魔導書を渡したのだよ」
そのときの俺は半分睡眠状態に陥っていたため、これがすごいものだとはまだ気づいていなかった。
*
朝になった。
今日は村にいる全員、早起きをしろという命令があったのにも関わらず、リンタは相変わらず起きない。
まあ無理もない、きのうの夜から朝までずっと警備をしていて、疲れたのだろう。
アルドさんが木箱の上にお立ちになった。
「今回、皆さんに早起きしてもらったのには理由があります。そう、村の復興をてつだってもらうためです。ハイズ村は崩壊しているとはいえ、家の原型はまだ残っています。
村周辺であれば、木をとっても良いと隣街の王に許可を取らせていただきました。なので皆さんで協力してさっそくハイズ村の復興に取り掛かりましょう」
村の住民たちから、やる気を感じる声がした。
俺は地盤を固くする作業をすることになった。理由は単純で、地盤を固めるという村の復興に大切なことをしながら、土魔法を使いこなせるように特訓ができると考えたからだ。
我ながら、良い考えだと思う。
「おっと……」アンに服を引っ張られ驚いた。
「どうしたアン、なにかあったのか? 」
「ないけど、私はなにをすればいいのかわからなくて……」
「じゃあ、設計でもーー」アンはすぐに嫌だと返事をした。
「じゃあ、ゴンといっしょにーー」
またもやアンは嫌だと首を振った。
「蓮と同じ作業をしたい」
アンは可愛らしい笑顔を俺に見せてきた。
俺はその笑顔をみて、つい愛おしいと感じてしまうのだった。
*
夜になった。今晩もまたアンが布団の中に潜り込んできる。
「アン、昨日の夜だけだよな? 俺と一緒に寝ていいのは」アンは首をかしげた。
「なんで蓮といっしょに寝ちゃだめなの? 」俺は、アンの悲しさを抑えている顔をみて、自分への罪悪感でいっぱいになってしまった。
「きょ、きょうだけ……だからな」アンは元気に「はい」と返事をした。
アンはまだ幼い、とはいえこんな美少女が、俺なんかに興味を抱いてしまったら……まあ、そんなことはないだろうけれど、俺はアンに幸せになってもらいたい。だから君とは一緒に寝れない…………。
蓮は眠りについた。
*
午前5時くらいだろうか「ねちがえたな〜」
テントをでるのは痛くて面倒だ。まだアンは寝ている。
アンが寝ているうちにやっておきたいことがあるからそれをやろう。俺は村長からもらった魔導書二冊を学んで見ることにした。
一冊目はエクスプレス魔導書?俺はゴブリンの村で少々こちらの文字について勉強していた時期がある。
だから簡単な単語は、多少読むことができる…………って「特急魔法について書かれてんじゃんかよ〜!」
アンは俺の大きな声に目を覚ます。
……その後、アンが起きている状態でも集中すれば勉強は捗るのでは?
と俺は考えたのだが、アン「かまって欲しい」と、何度もねだってきたため、しょうがなく魔法の勉強はまた今度と放棄することにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます