第9話 復讐か正義か
(で、本題に入るが)
(あ、はい)
(改めて言うが、これから君を危険な目に巻き込むことになる)
(はい)
(場合によっては命を落とすかもしれない)
(はい)
(俺はその責任を取れない)
(はい)
(それでもいいか)
(もちろんです。ボクはあのとき、一度死んだと思っています)
(俺は君の体を奪おうとしたのだが……)
俺の言葉を無視してアルトが続けた。
(アルノさんの復讐、それって正義を実行するためですよね)
一瞬、俺は答えに詰まった。
(ああ……いや、そんなに格好いいものではない。俺の私怨だよ)
(そうは思えません。だから、ボクの体を使って絶対に勝ってください)
(ああ、それはもちろん、最初からそのつもりだ)
(お願いします。ボクを育ててくれた村の人たちのためにも。だけど……)
(ん?)
(リリアを巻き込むのはやめてほしいんです……)
(それは当たり前だ。彼女を連れて行くのは安全のためだから。安心してくれ)
(約束ですよ)
(ああ、王都では俺の師匠に預けようと思ってる)
(えーと確か、大魔術師の?)
(そうだ。老いたとはいえ、魔法だけで闘えば、たぶん俺より強い)
(そうなんですか。それは心強いですね)
(ただ、彼は表立って王に反逆することができない。かつての勇者パーティーの一員だからな)
(ああ、そうなんですね)
(とはいえ、かくまうくらいのことなら協力してくれるはずだ)
(わかりました)
(で、君が王都に行くことをリリアに提案した形になってるだろ)
(はい)
(君が大魔術師のことを知っていたことにしておく)
(はい。そうしておいた方がいいですね)
それに、アルトのことをもっと知っておいた方がいいだろう。
(それから、君の両親と、村で育ててくれた人たち、さっきの村の悲劇を思うと本当に申し訳ないが、どんな人だったか教えてくれないか)
(大丈夫です。悲しんでいても帰って来るわけじゃないので、ボクの方が生かされたんだと思うようにします。そんな簡単に心の整理はつかないかもしれませんけど)
本当に心の強い少年だ。
(ああ、本当にすまない。俺がもっとしっかりしていれば、村が襲われることもなかったかもしれないのに)
(アルノさんは悪くないですよ)
(ありがとう……君は強いな)
(そんなことないですよ。じゃあ、ボクの両親のこと、説明しますね)
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