第14話 図書委員の過去
「家に帰っても母がいないのが当たり前で父とは離婚してて私が住んでいる家とは別のところに住んでます。それが何処の家なのかは聞いていないので分かりません。ですが、いつも家に帰っても私一人だけでした。両親が離婚したのは、私が中学生にあ上がってすぐの事でした…」
宇美は悲痛な顔を浮かべながら語り始めた。あまりに辛いのか手を力いっぱい握りしめていた。
「それは辛いね…‥」
「はい……でも慣れましたって言えれば良かったのですが、時間が経っても慣れることはありませんでした。そんな生活が高校生になっても続きました」
「……」
「こんな話聞かされても、徹君も困っちゃいますよね…‥」
宇美は貼り付けた笑みで話した。俺が宇美に対してやれることは何かないのだろうかと考えていたが、子供であり特別な力も持たない俺が何もしてやれないことにもどかしさを感じていた。
「そんな生活の中で好きになったのが読書ということかな?」
「えぇそうですよ。図書室で読めばお金もかかりませんし時間も潰せますからね」
俺と宇美の接点であるものが”読書”だ。だが俺と彼女では本を読む理由が大きく違う。俺の場合は”愛”を知りたくて読んでいるし、個人的に読書はそこまで好きというわけではない。宇美の場合は、金を使わないで行える暇つぶしのために読書をしていた。
「それは、なんというか……」
「そんなに悲しそうな顔をしないで下さい。最初は嫌で始めたことですが、読んでいるうちに読書するのが楽しくなったんです、本当ですよ」
「そっか…」
「えぇ…。でも、高校生になって徹君と初めて図書室で会って交流する内に読書だけじゃ満足出来なくなってきたんです、強欲ですよね」
恐らく宇美にとって俺が初めて出来た話し相手だからだろう。よく宇美は中学時代のことを語りたがらないが、俺は大分前だが一度だけ『誰一人友達いなかったので語れるが何もありません』と言っていたのを思い出した。
「初めて出来た友人が俺だったからか?」
「以前一度だけ話したこと覚えていてくれたんですね…。そうです、初めて出来た友人が徹君でした…最初は友人の関係で満足していたんです。ですが…」
そこで宇美は言葉を切って口をつぐんだ。その先は言いにくいのだろうから俺が言うことにした。
「俺に対して友人以上の関係を求めるようになった、かな?」
「はい……ですが徹君は私に対して特別な感情を一切向けていないことは早々に気づいていました。だって、私がする色仕掛けに無反応でしたから…」
(ん?色仕掛け……あれかシャツの谷間を強調してきたり、後ろから抱き着いて宇美さんの巨乳を俺に押し当てていたやつのことだろうか?無防備な女だなとしか思っていなかったが、色仕掛けだったとは……)
宇美の家庭環境と学生生活から容易に想像つくが、毎日のように寂しい気持ちが常にあったのだろう。そんな中で現れた一人の友人である俺という存在が彼女の寂しさの気持ちを埋めるのと同時に彼女の欲を刺激していたのだろう。
初めて刺激される彼女の欲望は立ち待ちと大きくなり、今の状況に至ったのだ。
「それで俺に対する穴埋め係りが門脇さんたちというわけだね?」
俺が原因で生まれた新たな寂しさへの対応は、他の人間で埋めることだったのだ。
つまり、門脇や竹内たちが宇美の心の欲望を満たしていたのだ。
「はい、学年巨乳ランキングで注目されて凄く”気持ちいい”ですし、何より心が満たされました」
(当たり前だが、この結果の原因は俺でもあるが竹内の作った巨乳ランキングか…)
「最初は門脇先輩だけで十分だったんです。けど付き合っているのに関わらず、他の男の人にも遊びに誘われるようになりました。もちろん門脇先輩に申し訳ないので、誘いに乗る事は無かったんですが、急に時間がないからと言われて遊びに行けない日もあったり、lineの返信も遅かったりして……」
「門脇さんも受験生だったから忙しかったんだろうね」
「……頭では分かっているんですが、どうしても違う考えが浮かぶ自分がいたんです。もしかしたら他の女と遊んでいるんじゃないか、私への興味が薄れたんじゃないか。考えれば考えるほどに不安になりました」
「それで門脇さん以外の男とまでヤるようになったんだね」
「そうです……。あのランキングの影響力は同学年だけでなく上の学年にも知れ渡っていました。寂しい気持ちを堪えることが出来なくなり、門脇先輩以外の男の人とデートに行くこともありました。もちろんデートだけで終わるわけなく、ホテルに連れてかれてエッチしました。最初は罪悪感で夜も眠れなかったんですが……」
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