星の紡ぎ手

@20upa

第0話 プロローグ

「平和な世界に生きられますように」


そう願われて、私は生まれた。

けれどその日、世界は終わった。


この星の周回軌道を静かに巡っていた月が、突如として砕け、

青い空を引き裂いて、無数の破片が世界中に降り注いだ。

だがそれは、ただの隕石ではなかった。


それらは地表に落下したあと、形を変えた。

戦車に、軍艦に、時にはミサイルのような姿に──

人類の歴史が刻んできた**“兵器”**そのものに、変貌を遂げたのだ。

それは、まるで“模倣”のように。


そして人々を、街を、国を、容赦なく襲い始めた。


地球各地に展開されていた軍事施設は壊滅し、国家は機能を喪失。

あっという間に、文明の灯は吹き消された。

人々はこの侵略体を、やがて**《ゴーレム》**と呼ぶようになった。


生き延びたわずかな人類は、連邦として結束し、

対抗作戦を開始したが──そのすべてが、失敗に終わった。


連邦が敗北を公式に宣言した翌日、

ゴーレムたちは突如、動きを止めた。


そして、残されたのは──ただの巨大な石塊。

動かない、何も語らない、無機質な“墓石”のようだった。


それから十四年が経つ。


いまだに時折、月の断片は降ってくる。

立て直しを図った連邦の施設を襲い、都市の一角を崩壊させる。

そのたびに人々は怯え、ただ祈るしかなかった。


やつらの真の目的が何なのか、

なぜ襲い、なぜ止まったのか。

──そしてなぜ、今も終わらないのか。


誰も答えを出せないまま、

人類は考えることをやめ、

ただ静かに、衰退していった。


それでも。

陽は昇る。

今日もまた、この瓦礫の街に朝が訪れる。

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