第20話 終焉

 「——クソが!!」


陽一の拳が桐生の顔面に炸裂した。


「ぐっ……!」


桐生の体がよろめき、壁にぶつかる。陽一はその隙を逃さず、さらにもう一発、腹部に拳を叩き込んだ。


「ガハッ……!」


桐生が血を吐きながら崩れ落ちる。


「美咲!!」


陽一はすぐに彼女の元へ駆け寄った。


美咲の肩からは赤い血が流れていたが、意識はまだある。


「陽一……」


「大丈夫だ、美咲。すぐにここを出る。」


陽一は美咲を抱え上げ、出口へ向かおうとした。


しかし——


「まだ終わっていない……」


倒れ込んだはずの桐生が、ゆっくりと立ち上がる。


「貴様……どこまで私の邪魔をする気だ……!」


桐生の手には、再び銃が握られていた。


(クソ……! まだ動けるのか!?)


桐生の指が引き金にかかる。


その瞬間——


「伏せろ!!」


廊下の奥から加藤の声が響いた。


「!?」


陽一は美咲を抱えたまま地面に倒れ込む。


直後——


バンッ!! バンッ!!


銃声が響き渡った。


桐生の胸に二発の弾丸が撃ち込まれる。


「……ぐ……っ……!!」


桐生の体が大きくのけぞり、そのまま床に崩れ落ちた。


完全な静寂。


陽一が顔を上げると、加藤が拳銃を構えたまま立っていた。


「間一髪だったな。」


加藤は銃を降ろし、近づいてくる。


桐生の体はピクリとも動かない。


「……死んだか?」


陽一が息を整えながら尋ねる。


加藤は桐生の脈を確かめた後、小さく頷いた。


「……終わったな。」


桐生——シンカの最高責任者は、ここで息絶えた。


すべての復讐が完了した。



数日後


陽一たちの持っていたデータは、報道機関に渡った。


シンカ社の違法な人体実験、裏取引、賄賂の数々——それらはすべて世間に暴露された。


会社は即座に強制捜査を受け、多くの幹部たちが逮捕された。


シンカは崩壊した。


陽一たちは、長い戦いを終えたのだった。



病院の一室


美咲はベッドに横たわっていた。


「……なんとか一命は取り留めたな。」


加藤が窓際に立ちながら言う。


「お前も少しは休めよ、陽一。」


「……ああ。」


陽一は、美咲の寝顔を見つめながら小さく笑った。


「これで、本当に終わりだな。」


——すべてが終わった。


陽一は静かに目を閉じた。


しかし、この戦いの中で彼が失ったものも、決して小さくはなかった。


それでも——


彼は生きている。


これから、新しい人生を歩んでいくのだ。



----エピローグ-----


数か月後——


陽一はとある町にいた。


シンカは崩壊し、桐生は死んだ。しかし、世界は何も変わらない。


どれだけ巨大な悪を倒しても、新たな悪が生まれる。


それでも、陽一は前に進む。


「——さて、次はどうするかな。」


彼はゆっくりと歩き出した。


復讐は終わった。だが、物語はまだ続いていく——。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

反逆のコード @biology25

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ