第6話
* * *
ビラに印刷された文字を何度も確認し、ついで店の看板を確認し、私はよし!と気合いを入れる。
私は今日、サークルの新入生歓迎会に参加するつもりだ。
硬式テニスサークル。
○月✖️日 第二弾!!新入生歓迎会やるよー!!
歪なイラストが載っているビラに書いてあるのによれば、大学の最寄駅にある居酒屋で、それが実施されるらしい。
「お!新入生かな?テニスサークルの新歓?」
「あ、はい!」
「おいでおいでー」
入り口付近に立っている上級生らしき人に声をかけられ、私は居酒屋に入る。
少し手狭な廊下を通り、開けた宴会場に出る。
まだ始まっていないものの、皆すでに適当な席に座り、近くにいる人と喋っていた。
そんな中に見知った鳥の巣のような頭を見つける。
「柴倉・・・?」
呟いたのが聞こえたのか、柴倉が振り返り、私と目が合って驚いた表情を見せた。
「お前、なんで、」
「柴倉ー!」
「どこいくんだー?」
立ち上がろうとした柴倉だったけど、周りの友人に引き止められてあえなく座り直す。
柴倉の側に行くほどの度胸はなく、私は上級生に促されるまま、端の席に座った。
やがて歓迎会が始まる。
何人かごとに一つの鍋がテーブルに置かれ、それをつつきながら、自分のテーブルの周りの人と交流するのがルールらしい。
「なんて名前?」
「は、はい。黒沢夏香です」
「なつかちゃんか、あたしはねー・・・」
自己紹介から始まり、気を利かせた先輩方が次々と新入生に話しかけていく。
知らない人と話せている!
妙に感動を覚えて、私はにやけてくる顔を隠すように、ジュースを口に運んだ。
結局水分の取り過ぎで、途中でトイレに行くために席を離れた私だけど、帰って来たら人の配置が変わっていた。
暴れ馬に恋をする 弥生 文 @yayoi_fumi
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