第4話

次に繋がるプランを練っていると、柴倉を呼ぶ声がした。




「あれ、柴倉くんじゃん」


「やっほー」


「おう」



柴倉が挨拶するのが聞こえ、私もそちらに目を向ける。


美人な女の子が何人か、柴倉を見つけて笑顔で喋っている。



女の子たちには見覚えがあった。

違う学科だけど、目立つグループだ。

新入生で一、二を争う可愛い軍団と聞いたことがある。



さすが柴倉、大学生活開始一ヶ月ですでに上位グループの女の子たちと親交を持つとは。





「柴倉って、昼ごはん1人なの?」


「やだあ、まじで?うちらと一緒に食べない?」




その誘いが聞こえ、私は思わずビクッと肩を震わせる。

こそこそと隅の方へ移動し、目立たないようにしよう。



柴倉が一瞬こちらに視線をよこすのを感じる。




大丈夫だから、早く行って。


そんな私の思いとは裏腹に、柴倉は彼女たちに向き直る。





「遠慮しとく。こいつと食べてる」



「そうなのー?」


「えー誰?その子」


「見たことないね」




おのれ柴倉。

内心で奴に肘鉄を繰り出しながら、私はぎこちなく顔を上げる。



ぺこりと会釈すると、面白くなさそうに女の子たちは柴倉に挨拶してから、去って行った。





「・・・行けば良かったのに」




私に絶対いい印象持ってないよあの子たち。


恨み言を一つ吐き出し、私は隣で悠々とおにぎりを頬張る柴倉に目を向ける。





「誰と食べたいかなんて、俺の勝手だろ」





事もなげにそういう柴倉を、私はじっと見た。




さっきのに関わらず、柴倉にはいろんな人から声がかかる。

きれいな女の子だったり、同級生の男子だったり、ノリのいい先輩だったり。




常に周りに楽しい友人がいるのに、柴倉はなぜか時折それを断って、こうして私と一緒にいる。


高校のときでもそうだった。




きっと、ひとりぼっちの子を放っておけないたちなのだろう。




柴倉との静かな空間は好きだけど、同時に申し訳なさが募ってくる。


彼は、こんなところでコミュ障で引っ込み思案なやつの相手をしている場合じゃないのに。





「?どうした」


「・・・いや、柴倉がモテるのも分かるなぁって」


「はあ?」




ごまかすようにそう言う私に、柴倉は不可解そうに眉を寄せる。

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