第4話

絵画の扉トラップには目もくれずに進むと、再 び声が聞こえた。


『貴方をここに呼んだのは私です』


「それはどうも」


御礼はいいので、元の世界に戻しては頂けない でしょうか。


朝一で茜の部屋に行き、寝顔を観賞する日課が あるので。


『貴方の持つ精神力で、*********を解き放ってく ださい』


「なんのことでしょう」


よくわからないんだけど。


『私の代わりに止めてください。無理を聞き入れ てくれるなら、女神の力を貴方に』


「いえ、いいです」


どこまで上ってきたんだろう。


いかに壮麗な螺旋階段でも、無限に続きそうな 雰囲気には頭を抱えたくなる。


『この干渉も、時間は限られています。秩序の綻 びに修正を。……どうか』


このまま無視しようかとも思ったが、相変わら ずの螺旋階段と絵の扉なので承諾するしかなさそ うだった。


まさか非現実の世界でも指図されることになろ うとは。


「引き受けたら何かメリットでも?」


『特にありません』


僕は一気にやる気をなくした。


元からないけど。


けれどどこなのかわからない、夢か現実かもわ からない場所に閉じ込められるのは御免だった。


ここにはなんの楽しみもない。


せめて茜でもいてくれればだいぶ違うんだけ ど。

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