第三話 いじめの主犯
秀國が帰ったことを確認した清正は秀國の教室に向かった。そこには、秀國をいじめている「朝倉長政(あさくらながまさ)」と数名がいた。
「今日もご苦労様。」
清正はそう呟くといじめている数名に札束の入った封筒を渡した。
「いつまでこんなこと続けんだよ。」
長政は顔を顰めて問いかける。その顔はおおよそ人をいじめている人間の顔ではなかった。
「いつまで、かぁ。そうだなぁ、秀國が学校に来なくなるまでかなぁ。」
清正は悪びれることなく答えた。その顔は秀國に向けているものと変わらないはずだが、どこか影を落としたかのように見える暗い表情に見える。
「先生にも渡してんだろ、これ。」
封筒を眺めながら長政がまだ問いかける。
「そうだね。どうせ使い道のなかったお小遣いだし、別に痛い出費ではないよ。」
清正がまた答える。
清正の家は裕福で、お小遣いも並の額ではない。それこそ、人を買収するのも容易いほどの額だ。
「やっぱ、性に合わねぇな。こういうの。」
長政はまた呟く。悲哀に満ちた声の中にはどこか嫌悪感が感じられる。それは自分に対してか、はたまた清正に対してかは本人にしかわからない。
「なら辞める?借金返済の足しが無くなっちゃうけど」
長政の家は父親のギャンブル中毒によって、多額の借金を抱えている。長政は少しでも母親の力になる為にこの様なことに参加している。
清正は無論、このことを知って利用している。
鼻歌を歌いながら教室を出ていく清正を長政たちはただ見ているだけだ。
清正はそのまま秀國の家に向かう。その足取りは秀國のゆっくりな足取りに合わせてる時とは違い、ずっと早い足取りだ。
「おーい秀國」
チャイムを鳴らしてインターホン越しに秀國を呼んだ。その数秒後に玄関が開き、そこから秀國の顔が出てきた。しかし、秀國の目の周りが赤くなっており、先程まで泣いていたことが伺えた。
「あぁ、清正か入っていいぞ」
清正は家の中に入ると、秀國をすぐに寝室に連れて行った。
「どうしたの、秀國」
清正は秀國の目を真っ直ぐ見つめている。
「実は、その」
秀國は言葉に詰まっている。清正は、優しく寄り添う様な声で
「いいよ、全部言って。なんでも話して」
そう囁いた。秀國はその声を聞いた途端泣き出して、清正の胸に飛びついた。そして、いじめられていたこと、先生も助けてくれないことも全部吐き出した。
それを聞いていた清正の顔は笑っていた。
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