盆ダンスインアンダーグラウンド

汐留ライス

第1話

 おれが五人囃子にいた頃にトライアングルを担当してたやつから、この前何年かぶりに連絡があったんですよ。


 そいつの話によると、今は小劇団に所属してるらしいんですけど、とにかく客が入らんと。もう劇団存続の危機だと。それでチケット代出すから来てくれって言うんで、平日の夜に、仕事終わりにわざわざ行ってきました。


 トライアングルは下北沢って言ってたんですけど、駅から異常なくらい歩かされまして。もう三軒茶屋から行った方が早かったんじゃないかってくらい離れたところにある、『我薄ガウス』っていう小劇場とライブハウスを兼ねてるみたいなとこに行きましてね。


 1階は閉まってましたけど猟銃か何かを売る店で、階段下りて地下1階の受付で「取り置きしてもらってる汐留っていいます」って言ったら「あっハイ、料金いただいてますんでそのままどうぞ」って言われてそのまま入っていったんです。


 まだ開演前なんですけど会場は薄暗くて、靴の感触で下がカーペットだってどうにかわかるくらいです。客席も椅子なんかなくて、適当に床に座る感じなんですけど、なんかその日雨降ってたワケでもないのにカーペットが湿っぽくて、ちょっとやだなあって思いながら後ろの方に座ったんですよ。


 前の方は舞台があって幕が下りてまして、幕って言っても昔、視聴覚室にあった感じの黒いカーテンみたいなもんなんですけど、おれと舞台の間に人影が3つ、おれも入れて客が4人ですよ。確かに少ないなあって思ってたら開演の時間になりまして、これ以上暗くできるんだってくらい真っ暗になってから舞台の方だけ灯りがついて、幕がこう、カーテンだから上じゃなくて左右にスーって開いたんです。

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