第16話『罠』

リビングの静寂の中、私は下半身を露わにして立ち尽くす。足元には、静かに昏睡するユウトとミカ。ユウトのユニフォームは汗に濡れ、ミカのワイシャツは乱れている。

指に力を込め、瓶を握る。中の白い錠剤が半分ほど減っていた。

「ユウトにずっと舐めてほしい」「ミカとずっとちゅうしてたい」

可愛らしい願い。まさか、それが罠だとは思わなかっただろう。私の肌に仕込まれた薬。ユウトが舐め、ミカが唇を寄せた瞬間、すべてが決まった。薬が回るまで、たったの十数分。二人は崩れるように倒れ、静かな寝息を立てる。

私は呟く。 「……私の物が、手元に戻ってきた」

内側はまだ熱い。ユウトの唾液が残り、ミカの唇が触れた。薬が二人に染み込み、眠りを誘う。

「私のフェチ、役に立つね。気持ち良かったよ。ありがとう」

目は冷たく光る。ユウトの身体を引きずり、地下へ降りる。コンクリートの冷たさが足裏に染みる。鉄の椅子に座らせ、ロープで縛る。手錠をかけ、しっかりと固定する。

次にミカを運び、同じように拘束する。指先で髪を梳きながら呟いた。

「目覚めるのは、まだ先」

あと数時間は眠り続けるだろう。それまで、二人の温度を楽しむ。ユウトに指を這わせると、昏睡の中でも反応する。

「ユウト……私の物」

舌先でそっと触れる。ミカに触れると、熱が伝わる。甘くて、柔らかい感触。物置小屋で寄り添っていた二人の姿が、頭の奥に滲む。あの時は、まだ「私の物」じゃなかった。

けれど今は——

ユウトの汗に触れ、ミカの首筋に唇を寄せる。支配するように、感じる。

「永遠に、私の物」

瓶を握りしめ、呟く。地下室の薄暗がりに、私の影が揺れる。目覚めたら、次が始まる。

「私で、二人を縛りつける」

言葉の余韻だけが、冷たい空間に溶けていった。

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