ある空き家について
@Dr_Kobaia
ある空き家について
どうも。はじめまして。これって雑誌の取材かなんかですか?オカルト系の?へえ。まあいいですけど。
それにしてもあの家の話をわざわざ聞きたいなんてね。というか、あなたよくご存知でしたね。僕らがあそこに行った、なんてこと。はい。もちろん初めてですよ。この話は知り合いにもしてきませんでしたからね、いままで。
あれは中学の頃です。
仲間内で、夏休みに肝試ししようって計画があって、ずっと近所で有名だったあの廃墟に入ることになったんですよ。松本ってヤツが言い出したんです。今思えばとんでもないですけどね。だって不法侵入ですから。
あの家は僕が生まれる前からずーっと空き家だったみたいなんですよ。でも、もとの造りはかなり立派だし、一口に廃墟って言っても、そこまで荒れ果ててるって雰囲気でもなかったんです。だからいざ中に入るってなると、やっぱ緊張してしまうんですね。なんか、忍び込んでる感?がすごかったんですよ。いや、ほんと若気の至りってやつで。
はは。
それでいざ入ってみると、夜中だったから玄関から続く廊下の奥なんかはほんと真っ暗で。でも、ぜんぜん荒れてなんかなかったんですよ。土間は広いし、そこから一歩上がったとこの板ってあるじゃないですか。あれね、名前「式台」っていうらしいんですけど、大きい一枚板で出来てて、実に立派なものでしたね。
入ってみると、とてもいい和風の屋敷だったんです、あの家は。
それで中に入って探検してみると、家具みたいなのは一切ないし、正直見ていて面白くないんです。だって廃墟探索って、建物の中にある遺物を探して思いをはせるのがだいご味、みたいな所あるじゃないですか。
でも松本のヤツが言い出しっぺだからってんで、強がっちゃっいまして。奥まで見に行くぞなんて言いながら、結局廊下の一番奥にある部屋まで行ったんです。
…その和室はやけに綺麗でした。掃除が行き届いてるとかそう言うんじゃないです。変にこざっぱりしすぎてるって意味です。
だってその部屋、三方の壁に窓も戸もないんです。そのくせ、奥の方に白い祭壇のようなものしか置いてなかったんですから。
さっきも言いましたが、その家は他の家財道具は一切なかったんです。それなのに、一番奥にある締め切った部屋にだけ……祭壇があるんですよ?おかしいでしょ…?
しかも祭壇の上に、変なものがありました。
遺影があったんですよ。
なんで分かったかっていうと、リボンがかかってたからです。
遺影って黒いリボンがかかってるじゃないですか。ほら、上の部分からから2本、八の字にかかってるでしょう?
でも懐中電灯で照らしたからか、光を反射して最初誰の遺影かよく見えませんでした。それで。僕らの中の一人がね、思わずそれをのぞき込んじゃったんです。
ゾッとしました。
なんでかっていうとね。
それ、写真じゃなかったらしいんです。
…なんだったと思います?
鏡だったんですよ。
鏡。
四角い鏡に、遺影みたいなリボンがかかって置いてあったんです
つまり、のぞき込んだ人の姿が、まるで遺影の中に写りこむような形になっちゃったんです。
どうです?不気味でしょう。ものすごく。
もう帰ろう…。
誰からともなくそんな雰囲気になって、部屋から出ようと振り向いたとき、入り口のところを見て気づいたんです。
それまで僕たちの後ろ側にあった襖のところに、何か文字が書いてあるんです漢文でどういう意味なのかは全然分からなかったんですけど、
「悪」とか、
「怨」みたいな。
詳しくはもう覚えてませんが、物騒な漢字が混じってて、明らかに何か呪いの文言みたいでした。誰がどう見ても、マトモな文章ではないのは確かです。
もうそれで僕たち確信しました。分かったんですよ。
多分そいつね、僕たちに、
「死ね」
って言ってるんですよ。きっと。
僕たち全員が凍りついたようになりました。この空き家はヤバい。とんでもない悪意がないと、こんなもの置かないだろうって。
それで…。
…。
その…。
…。
あ…はい。
それで、いろいろあって…。
えーっと、そこからはみんな逃げるようにそれぞれの家へ帰りました。とにかく。
一人はかなり参っちゃってて。吉川って言うんですけどね。僕、夜中にそいつん家まで送ってあげましたもん。大変でしたよぉ。吉川のやつ泣きそうになってました。本当に。
これはかなりマズいことになったのでは?俺らも呪われたんじゃないか?って本気で思いました。
でも誰が?何のために?
誰があんなものを置いておいたのかは、今でも分かりません。あそこの土地の所有者はとっくの昔に亡くなっていて、そこの家も誰も住まなくなって十年単位の時間が経っているそうですから。
でもね、何のためにあんなことをやったのかは…分かるんです、なんとなく。多分罠でも仕掛けるように、あの家に忍び込んだ人間を引きずり込もうとしたんでしょうね。
ああ、でも僕らの誰かが実際に死んだとかはなかったです。ええ。幸いなことに。
ほんと。
え?
鏡を覗き込んだやつが誰か…ですか?
ああ…。
誰だったかなぁ?
そういや、僕らの中で誰が鏡を覗き込んだかは、あんまハッキリ覚えてないんですよね。みんな結構ビビって、パニックになってたんでね。
はは。
え?
いや、4人じゃないです。
あの夜空き家に行ったのは3人ですよ。松本、吉川、俺の3人だけです。
3人。
4人じゃないです。
うん。
ええ。
すんません。
はい?
何です?この写真?
…。
……。
あなたの知り合いなんですか?
…。
息子…?
あなたの?
ああ…。
そうかぁ。
あなた、お母さんだったんですか。
へぇ。
いや…ちょっと知らないですね。
いや、いや、会ったことないですよ…。
こんな人…。
…え?
あぁ。そっか。もう全部しゃべってんですか…。吉川のやつ。
いや。
だから…。
だって。
元はと言えば松本が言い出したんだし。
ていうか。
あの時は。
吉川が急に。
逃げ出したから。
俺も。
わけわかんなくなって。
あいつのこと。
置いてくとか。
そんなんじゃ。
申し訳ないです。
ごめんなさい。
ある空き家について @Dr_Kobaia
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます