第35話

「そうかな?大人になった?」



「綺麗になった。びっくりしたよ。」



「・・・ホント、智也は相変わらず平気でそういう事言うよね。」




そんな事を言いながら笑う彼女は本当に綺麗になった。





この、気持ちはなんだろう。




妙に、ソワソワとする、この気持ちはなんだろう。





「ホント智也は変わらないね。目を見て話す所も昔のまんまだ。」




そう言って運ばれたグラスに伸ばした指には、シルバーの指輪が光っていた。









卒業してから五年、智也には智也の世界があった。


ずっと唯子を想い続けていた訳じゃない。




同様に、唯子には唯子の世界があった。


ずっと広輝を想い続けていた筈はない。






当たり前のことだ。

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