第34話

「智也のやつさ、一人でオーストラリア行くって言って彼女に振られたんだって!」



「だから、うるせーよ田村!!

オレに唯子と話させろ!!」



過去の級友がノリで口を挟んできた事で、少しいつものペースを思い出した。




「一人でなんてかっこいいね。何しにいったの?」



「サーフィン。」



「へえ…!智也っぽい。結構真剣になっちゃってるんでしょ?」



「はまってるなぁ。最初はモテるかと思って始めたのに…。

今じゃ女と遊ぶよりサーフィンの方が楽しくて…振られる要因になってるよ。」



「あはは!智也は変わってないな。昔からそうだよね。

バカばっかりやってる様で成績もいいし部活もサボった事無かったもんね。真面目な智也らしい。」



楽しそうに笑う彼女は、想像していたよりずっと綺麗だ。




「…唯子は変わったな。」




唯子は、変わった。


まだ中学生だった彼女はこんなに素直に智也を褒める様な事は滅多に無かった。




人一倍優しくて、他人の本質をしっかりと見る彼女は、けれど意地っ張りで気が強かった。



外見だけでは無く、内面もまた、大人になったのだろう。

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